労働契約書の終了には、(1)被雇用者との合意、(2)雇用者による一方的な解除、(3)解雇があります。これらの内、(2)と(3)について異なるものであることに留意が必要です。

以下を踏まえて、ベトナムにおける現地法人体制をお考えください。

雇用者による労働契約書の一方的な解除
  • 労働法第38条に規定されています。雇用者にとって汎用となるのは、同条1項a号「被雇用者が、頻繁に労働契約に定められた業務を遂行しない場合」となるでしょう。
  • 但し、以下の場合には、雇用者による労働契約書の一方的な解除はできません(労働法第39条)。

1. 被雇用者が疾病、又は労働災害、職業病の被害を受け、認可を受けている医療機関の指示に従って治療、療養している。ただし、労働法第38条1項b号で規定する場合は除く。
2. 被雇用者が年次有給休暇、私的な休暇、又は雇用者の許可を得たその他の休暇中である。
3. 労働法第155条3項で規定される女性の被雇用者。
4. 社会保険に関する法律の規定に基づき、産休を取得する被雇用者。
また、雇用者が労働契約書の一方的な解除には、以下の期間で被雇用者に事前通告をしなければなりません(労働法第38条2項)。
a) 無期限労働契約の場合は少なくとも45日前
b) 有期限労働契約の場合は少なくとも30日前
c) 労働法第38条1項b号で規定する場合、及び12ヶ月未満の季節的業務、又は特定業務の労働契約の場合は少なくとも3営業日前

不法な労働契約の一方的な解除を行った場合の雇用者の義務
  • 労働法第42条に規定されています。

1. 被雇用者を労働契約書で定めた業務に復帰させ、さらに被雇用者が不法に契約解除された期間の給与、社会保険、健康保険以外に、労働契約書に基づく最低2ヶ月の給与を支払わなければならない。
2. 被雇用者が元の業務に復帰したくない場合、労働法第42条1項で規定する賠償金以外に、雇用者は労働法第48条の規定に基づく、退職手当を支払わなければならない。
3. 雇用者が被雇用者を復帰させたくなく、被雇用者もそれに同意する場合には、労働法第42条1項で規定する賠償金及び労働法第48条で規定する退職手当以外に、両当事者は、労働契約を解除するための被雇用者に対する追加の賠償金について協議できるが、労働契約書に基づく最低2ヶ月の給与に当たる賠償金を支払わなければならない。
4. 労働契約にて締結した職位、業務がなくなったが、被雇用者が復帰したい場合、労働法第42条1項で規定する賠償金以外に、両当事者は労働契約の修正・補則について協議できる。
5. 雇用者が、事前通告期限の規定に違反した場合、被雇用者に対して事前通告の無かった日数に応じて、被雇用者の給与に応じた賠償金を支払わなければならない。

解雇
  • 雇用者は以下の場合(のみ)に解雇処分を適用することができます(労働法第126条)。

1. 被雇用者が窃盗、汚職、賭博、故意に人を傷つける行為、職場内での麻薬の使用、雇用者の経営・技術上秘密の漏洩、知的所有権の侵害行為を行い、雇用者の資産、利益に重大な損害をもたらす行為、または特別重大な損害をもたらす恐れがある行為を行う場合。
2. 昇給期間延長処分の制裁を受けながら、制裁期間中に再犯した被雇用者、または免職の制裁処分を受けながら、再犯した被雇用者の場合。再犯とは、被雇用者が労働法第127条の規定に基づく処罰を、処分された規律違犯行為の処分期間が解消しない間に、再び起こす場合である。
3. 被雇用者が正当な理由なしに月に合計5日、又は1年に合計20日、無断欠勤した場合。正当な理由があると認められる場合とは、天災、火災、自身または家族が疾病し、認可を受けている医療機関の承認がある場合、また就業規則に規定されるその他の場合である。

  • 「昇給期間延長処分の制裁」とは、「労働規律違反処分」の1つで、労働法第123条に規定されています。
労働規律違反処分(労働法第123条)とは

1. 労働規律違反行為への処分は、以下の通りに規定される。
a) 雇用者は被雇用者の過失を立証しなければならない。
b) 事業所における労働団体の代表部が参加する必要がある。
c) 被雇用者が出席しなければならず、自己弁護する権利及び弁護士、又は他の者に弁護を依頼する権利を有する。18歳未満の場合、両親または法的代表者が参加する必要がある。
d) 労働規律違反行為の処分は、文書により作成されなければならない。
2. 1件の労働規律違反行為に対し、複数の労働規律処分を適用してはならない。
3. 被雇用者が同時に複数の労働規律違反行為を行った場合は、最も重い違反行為に対応する最も重い処分のみが適用される。
4. 次に掲げる期間にある被雇用者に対し、労働規律処分を行ってはならない。
a) 病気・療養休暇中。雇用者の同意を得た休暇中。
b) 逮捕・拘留中。
c) 労働法第126条1項で規定された違反行為に対する管轄機関の結論と検証の結果を待っている期間。
d) 女性被雇用者が妊娠中・出産休暇中。被雇用者が12カ月齢未満の子供を養育中。
5. 労働規律に違反した被雇用者が、精神疾患または認識能力ないし自己の行動管理能力を喪失する、その他の疾患に罹患している場合は、労働規律処分を行わない。

  • 労働規律とは、就業規則に定められるものであり(労働法118条)、その違反処分として「戒告」「6か月を超えない昇給期間延長や免職」「解雇」が認められています(労働法125条)。
  • また、労働法第127条では、以下のように定められています。

1. 戒告処分を受けた被雇用者は、処分を受けた日より3か月後、昇給期間延長の処分を受けた被雇用者は、処分を受けた日より6か月後に、再犯しない場合は処分を解消される。免職処分の場合は3年後、労働規律違反行為を引き続き行なっても、再犯とは認められない。
2. 昇給期間延長の処分を受けた被雇用者が、制裁期間の半分が経過した後、改善を見せた場合、雇用者は制裁期間の短縮を検討する。

  • 労働規律処分を行う際の禁止規定として「被雇用者の身体・人格への侵害」「労働規律処分に代えて罰金・賃金カットの形式を用いること」「就業規則で規定しない違反行為を行った被雇用者に対して、労働規律処分をすること」が定められています(労働法第128条)。
一時業務停止
  • 以下の場合、雇用者は被雇用者を一時業務停止にすることができます(労働法第129条)。

1.被雇用者の違反内容が複雑であり、被雇用者が業務を継続することにより違反の審理が困難になると判断した場合、雇用者は被雇用者の業務の執行を一時的に停止する権利を有する。一時業務停止は、事業所における労働組合の代表組織の意見を聴取した後に実施できる。
2. 一時業務停止の期間は最高15日であり、特別な場合も90日を越えてはならない。一時業務停止の期間中、被雇用者は停止前の賃金の半額について、前払いを受けることができる。一時業務停止期間の終了後、雇用者は被雇用者を業務に復帰させなければならない。
3. 労働規律処分を受ける場合も、被雇用者は前払いの賃金を返済する必要はない。
4. 労働規律処分を受けない場合、雇用者は被雇用者に対して、一時業務停止期間の賃金を十分に支払わなければならない。

  • 「違反の審理」とは同条3項及び4項より「労働規律違反処分」を行うか否かの審理であると解釈されます。一時業務停止期間の目的は「労働規律違反処分」の検討とされます。