今回のテーマは、ベトナムの現地法人に対して現物出資を行い、且つ設立前の立替費用を現地法人より親会社に戻す場合の付加価値税についてです。
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現物出資とは何か
企業法では、次のように定められています。
- 出資とは、会社の定款資本を構成するために資本を払い込むことをいう。出資は、法人を設立するための出資と既に設立された法人への追加出資がある(企業法第3条13項)。
- 出資資産とは、ベトナムドン、交換自由な外貨、金、ベトナムドンによって評価可能な土地使用権の価値、知的財産権の価値、技術価値、ノウハウ価値などの資産をいう(企業法第35条)。
- ベトナムドン、交換自由な外貨、金、ではない出資資産は、出資者や発起株主、専門の鑑定業者によって評価され、ベトナムドンにて表現しなければならない(企業法第37条1項)。
- 法人設立時の出資資産は、出資者や発起株主の全員一致の原則に基づいた評価、又は専門の鑑定業者による評価を必要とする。専門の鑑定業者が評価した場合には、出資資産の評価額は、出資者や発起株主の過半数によって可決されなければならない。出資資産が出資時点における実勢価額と比較して割高に評価された場合には、出資者や発起株主は、評価確定時点の実勢価額との差額を連帯して追加で払い込み、伴って、故意に出資資産を実勢価額より割高に評価した場合における損害について連帯責任を負う(企業法第37条2項)。
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付加価値税に関する法令
財務省通達219/2013/TT-BTCの第5条7項には、付加価値税の申告対象外のケースとして、次のようにあります。
a) 法人設立における現物出資。出資資産は、その原産関連書類と共に、次に示すものが必要とされる。払い込んだことの文書、合弁契約書や提携契約書、出資を受ける者の経営委員会の資産評価文書(又は法令によって鑑定機能を有する業者の評価文書)。
財務省通達26/2015/TT-BTCの第3条7項には、付加価値税のインボイス発行のケースとして、次のようにあります。
b) 売り手は、次の場合にインボイスを発行しなければならない。商品販売、サービス提供。これには、販売促進、広告、サンプルに使用する商品を含み、労働者への譲渡、支給、贈与、交換、給与代替のケースを含む(内部訓練用、事業活動における内部消費は除く)。
財務省通達39/2014/TT-BTCの付録4の2.15項には、出資資産に対するインボイス及び備え付け証憑の規則が定められています。
b1) 法人への現物出資について、出資資産は、その原産関連書類と共に、次に示すものが必要とされる。払い込んだことの文書、合弁契約書や提携契約書、出資を受ける者の経営委員会の資産評価文書(又は法令によって鑑定機能を有する業者の評価文書)。
b2) 会計処理について帰属性のある組織や個人の間における移動資産、企業分割、吸収合併、企業形態の変換における移動資産は、当該資産の原産関連書類と共に移動指示書が必要であるが、インボイスを発行しなくてよい。会計処理について互いに独立している組織や個人の間における移動資産、各当事者間の出資者が法人格を満たす組織や個人である場合の移動資産は、規定通りに付加価値税インボイスを発行しなければならない。
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(各種の公文書に見る)実務上の見解
以上より、
- 現物出資においては、これについての付加価値税申告を行う必要はなく、しかしながら、上記の各種証憑を備え付ける必要があります。
- 立替費用は出資資産として見られ、(ベトナム法に準じて)互いに独立した法人である場合には、課税取引となりインボイスを発行しなければなりません(10%適用。法令が複雑ですのでここでは割愛させていただきます)。
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上記は付加価値税について触れましたが、会社設立前の立替費用は、この他にも、法人税法上の論点や実務上の論点があります。
なお、財務省通達39/2014/TT-BTCは2020年10月末で失効しますが、その代わりとなる財務省通達68/2019/TT-BTCには、現物出資や立替費用の詳細が見られないため、別途法令が公布されると思われます。