建設や調達に関連するベトナムのプロジェクト案件は、ここ5年ほどの間にODA(政府開発援助)などのパブリックな案件が減りました(官民パートナーシップPPPは含まず)。ともなって、ベトナムローカルの民間プロジェクトの受注が課題とされてきました。今回は、入札法について触れます。
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ベトナム入札法の基礎的な理解
- 入札法(43/2013/QH13)のほかに、商法の規定を確認する必要があります。また、各種政令や通達を確認する前に、国際条約など国際法令との関連を確認する必要があります。
- 入札法の第3条によれば、「ベトナム社会主義共和国が加盟国となっている国際条約に内国法(入札法)と異なる請負業者や投資家の選定規則がある場合には、当該国際条約の規則に基づく」とあります。日本とベトナムの関係性においては、ベトナムにおいて2019年1月14日に効力を発した環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)が最も新しく、かつ、明確となっています。
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ベトナム入札法の対象範囲
対象は、入札に参加する請負業者、投資計画を実施(等)する投資家に分かれ、かつ、請負業者も投資家もベトナム国内とベトナム国外に分かれます。国内外の請負業者や投資家の参加できる国際入札と、国内の請負業者や投資家のみが参加できる国内入札があります。
- 次の各号に上げるような場合には、コンサルティングサービス、非コンサルティングサービス、物品提供、工事提供が、入札法の対象となる請負業者の範囲とされます。
- 国家機関、政治組織、政治・社会組織、政治社会・職業組織、社会・職業組織、社会組織、人民武装部隊単位、公立事業単位の国家資金を使用する投資開発計画。
- 国有企業の投資開発計画。
- 上記2号には定めないが、計画の総事業費の中に、30%以上又は30%未満であるが5千億ドン以上の国家資金、国有企業の資金を使用する投資開発計画。
- 国家機関、政治組織、政治・社会組織、政治社会・職業組織、社会・職業組織、社会組織、人民武装部隊単位、公立事業単位の常時活動を維持する目的における国家資金を使用した調達。
- 公的商品、サービスを提供する目的における国家資金を使用した調達。
- 国家資金を使用した国家備蓄品の購入。
- 健康保険、診療サービス及び治療、その他公的医療施設からの合法的な収入を原資とした国家資金を使用した薬剤、医療物資の購入。
- 計画の総事業費の中に、30%以上又は30%未満であるが5千億ドン以上の国家資金を使用するベトナム内資法人の外国への直接投資計画に対しては、コンサルティングサービス、非コンサルティングサービス、物品提供が、入札法の対象となる請負業者の範囲とされます。
- PPPによる投資計画、土地使用が必要な投資計画を実施する投資家も入札法の対象範囲とされます。
- 石油に関する法律に基づいて石油鉱床の探査、開発及び石油採掘に直接関連する石油サービスを提供する請負業者の選定を除く石油分野における請負業者は入札法の対象とされます。
- 上記の対象外においても、入札を行う組織又は個人は、入札法の適用を選定することができます。
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請負業者としての入札参加条件
在ベトナムの外資法人が請負業者となる場合、主に以下のような条件があります。国内入札、国際入札どちらにも適用されます。非常に多岐にわたるため、どのような入札にも共通となるサマリーのみ記載させていただきます。
- 入札図書(入札招請書や指示書)を作成するコンサルティング業者、請負業者からの意向表明や事前資格審査エントリー書類を審査するコンサルティング業者、事前資格審査結果や応札業者選定結果を鑑定するコンサルティング業者とは、法律上及び財務上において独立していなければなりません(入札法の第5条及び政令63/2014/ND-CP)。
- 入札参加における言語はベトナム語となり、通貨はベトナムドンとなります(入札法の第9条及び第10条)。
- 入札保証金が必要となります。本レターでは割愛しますが、入札の形式(入札法の第20条~26条、政令25/2020/ND-CP、首相決定17/2019/QD-TTg)、請負業者の選定形式や評価方式(入札法の各条項)によって入札保証金は異なります。※政令25/2020/ND-CPは2020年4月20日からの施行です。
- 応札評価におけるポイント加算や金額加算の根拠となる優遇措置があります。コンサルティングサービス、非コンサルティングサービス、物品提供、工事提供の種別に加えて、女性や傷病兵、身体障害を持つ労働者の占める割合にも準じます。
ただ、物品提供や工事提供は、それぞれ入札法とは異なる個別の規定が存在しますので、注意が必要です。
例えば、物品提供では、財務や実績の証明が必要となり(計画投資省通達05/2015/TT-BKHDT)、工事提供では建設業ライセンスがあらかじめ必要となります(参考:弊社75号レター)。※コンサルティングサービス、非コンサルティングサービスも、その内容によって入札法とは異なる個別の規定が存在することがあります。
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なお、PPP形式を除き、プロジェクト主が国営企業である場合を個別に規定した法令は存在しません。しかし、請負業者(や投資家)の選定基準は、各プロジェクト主の基準や判断に委ねられている部分が大きくなっていますので、国営企業の場合には、様々な個別条件が提示される事例が多いと聞きます。
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ベトナムは、経済発展(GDPなど)が同等である他国に比べて、交通インフラが貧弱であると言われています。都市鉄道が稼働していなく、モータリゼーションが「まだ」です。
バイクの所有台数が多く、道も混雑していますが、1,000人あたりの自動車所有台数は、2019年時点で23台程度(43名に1台)と試算されています。
ベトナム政府や商工省によれば、モータリゼーションの加速ポイントを2025年から2035年として、2030年の自動車登録台数見通しを1,100万台から1,700万台に定めています。これは、人口が1億人である場合、6名~9名に1台の自動車所有比率となります。
したがって、インフラにかかるプロジェクト案件はしっかり成立していく必要があり、付随する環境保護問題も含めて、日系企業には他国企業に比べた優位性があります。弊社も微力ながら、ご縁のあった日系企業が積極的に参画できるような支援体制を取っていきます。