いつもお読みいただきありがとうございます。今回は、「労働上の安全及び衛生について特に厳重な注意を求められる業種」における雇用者としての労務管理について「概要」の範囲にてご案内します(詳しくはお問い合わせいただければ幸いです)。
「労働上の安全及び衛生について特に厳重な注意を求められる業種」とは、主に労働傷病兵社会問題省の通達06/2020/TT-BLDTBXHに定められる業種をいいます。ただ、これらの業種に該当しないからいいというわけでもなく、例えば危険物や有害物を取り扱う場合は、ベトナム国家の技術や品質の基準であるQCVNやTCVNに、労務管理基準が定められているケースがあります。
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労働者に対する訓練義務(政令44/2016/ND-CPなど)
- 労働訓練の対象者は6種類に分かれており、現場の責任者のみならずマネジメントサイドの責任者も含まれます。
- 労働訓練のライセンス(A種~C種)を有する労働訓練評価機関により、現場に従事する労働者に対しては、安全カードを発行しなければなりません。
- 2年に1回、労働訓練を実施する必要があります。
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労働災害・職業病・技術的な事故に対する基本的な義務(2015年労働安全衛生法など)
- 労働災害とは、労働上の安全を害することによって業務上又は通勤途上で人員が負傷・死亡することをいい、職業病とは、労働上の衛生を害することによって業務上又は通勤途上で人員が疾病や健康被害を起こすことをいいます。
- 技術的な事故とは、業務上で発生した機械設備や資材の破損をいい、技術の安全基準の許容範囲を超えて、人間のみならず資産や環境に対する損害リスクがある事象をいいます。さらに「技術的な重大事故」とは、技術的な事故よりも広範囲に大きな影響を及ぼす事故をいい、地域内の他の事業者にも影響を与えるケースをいいます。
- 事業主(雇用者)は、労働災害・職業病・技術的な事故に対して次のような義務があります。
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- 発生した場合の(関係各位への)通知義務のほか、発生するリスクがある場合の通知義務があります。
- 応急処置義務および調査義務があります。
- 被害者(被災者)に対し費用負担や補償の義務があります。下記の労働災害及び職業病にかかる保険制度とは別です。
- 労働災害及び技術的な重大事故については、年に2回(7月5日まで及び1月10日まで)、省市レベル労働傷病兵社会問題局(DOLISA)に報告を行わねばなりません。一方で、職業病防止について、年に1回、国家保険管理機構に報告を行わねばなりません。
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労働者の健康管理及び職場の衛生管理(保健省通達19/2016/TT-BYTなど)
- 業種別、業務別に労働者の健康管理、職場の衛生管理を体系的に行う必要があります。定期健康診断の義務は、どのような企業にも当てはまりますが、業種によっては診断の項目を指定する必要があるほか、職業病検知診断を実施しなければなりません。この場合、労働者の健康管理書類は、健康診断書・職業病検知診断書(及び関係書類)・病欠その他の関係書類・法定フォーム書類をセットにして保管しておかねばなりません。
- 施設や労働環境に対する要件があります。例えば、15~20名につき1つの手洗い所、11~20名に1つの排水口、1名1シフトにつき1.5リットルの飲料水など。
- 女性労働者については、女性労働者を雇用してはならない職業の規定に反していないかをチェックする必要があります。特に、妊娠中又は12か月未満の子供の育児を行っている女性労働者を雇用してはならない職業には注意が必要です。
- 保健省通達19/2016/TT-BYTにおいては、年2回(7月5日まで及び1月10日まで)の区郡レベル保健センターへの報告も義務づけられています。
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機械設備や資材の管理、労働者の装備(労働傷病兵社会問題省の通達36/2019/TT-BLDTBXHなど)
- 業種によって、機械設備や資材はその管理について規制が発生します。例えば危険物や有害物を取り扱う場合は、ベトナム国家の技術や品質の基準であるQCVNやTCVNにおいて、廃水や排気の基準、一般廃棄物や有害廃棄物の基準として定められます。
- 同時に、労働者が装備すべき服装についての規定が発生します。例えば塗装業であれば、防塵マスク、粉じんや機関摩耗から守られるグラス、防護手袋とシューズなどとなります。これらは労働者が自身にて購入するように手当をつければよいというわけではなく、雇用者にて準備し、労働者からは受領署名をもらう必要があります。
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基本的なことですが、労働者が労働災害及び職業病にかかる保険制度の適用を受けるには、雇用者として、強制保険(社会保険・健康保険・雇用保険)に加入している必要があります。このうち、社会保険は次のように整理されます。
疾病・出産 | 労働災害・職業病 | 年金・死亡 | 計 | |
雇用者 | 3.0% | 0.5% | 14.0% | 17.5% |
労働者 | – | – | 8% | 8% |
計 | 3.0% | 0.5% | 22.0% | 25.5% |
労働上の安全及び衛生について特に厳重な注意を求められる業種に該当し、以下の条件を満たした雇用者は(かつ労働訓練評価機関の報告書を添付した雇用者は)、労働災害・職業病に対する率0.5%を0.3%に引き下げることができます(2020年7月から施行されている政令58/2020/ND-CP)。
- 労働上の安全及び衛生について、申請時より3年の間に法令違反による罰金を科されていないこと(刑事罰・行政罰)。
- 申請年より直近3年間、労働災害に関する定期報告及び労働上の安全及び衛生に関する報告について過不足なく行っていること。
- 申請年の前年における労働災害発生率が、申請年より直近3年間における労働災害平均発生率よりも15%以上低いこと。または、申請年より直近3年間で労働災害が発生していないこと。
労働者が享受できる労働災害及び職業病にかかる保険制度の詳細については、別の機会にご案内します。