いつもお読みいただきありがとうございます。今回のテーマは、ベトナムに赴任し、居住者となる方の個人所得税の課税期間です。
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参照法令
財務省通達119/2014/TT-BTCの第2条(納税義務者)より
二重課税の回避および居住者の脱税防止に関する租税条約を締結した国や地域の市民権を有する個人でベトナム居住者となる者は、当該個人が初めてのベトナム滞在である場合、両国における二重課税を回避するため、両国の租税条約に定められる領事承認手続きを実施することはなく、ベトナム入国月より労働契約書が終了しベトナムを出国する月までを個人所得税の計算期間(月単位にて計算)とする。
財務省通達111/2013/TT-BTCの第6条(課税期間)より
居住者に対して、もし当該個人が陽暦(暦年)で183日以上ベトナムに滞在している場合、暦年が課税期間となる。当該個人が暦年において183日未満のベトナム滞在であっても初めてのベトナム滞在からの12か月間において183日以上の滞在となる場合には、初回の課税期間は初回滞在開始の日より連続した12か月とし、2年目からは暦年とする。
非居住者に対しての課税期間は所得の発生都度であり、店舗などの固定の事業拠点を有する個人事業者である場合には、事業所得を有する居住者個人同様に取り扱われる。
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赴任開始時
- 初回赴任時は(赴任のための)入国月より連続した12か月を課税期間とし、2年目以降は暦年(陽暦1月~12月)となります。2回目以降の赴任時は暦年となります。
- 初回赴任時の課税期間は「入国日」からであるとする事例(公文書など)がありますが、厳密には「赴任のための入国日」からとなり、もし、赴任の前に(日本国の居住者として)視察や準備などでベトナムを訪れていた場合は含まれません。しかし実務的には、パスポートのコピーを提出し特に説明を添えない場合には課税期間はこちらの意図通りにならないケースがあります。
- また、初回赴任であっても、赴任の前に(日本国の居住者として)視察や準備だけではなく、個人的な旅行でベトナムを訪れていた履歴がある場合など、適切な説明を添えないと暦年を課税期間と(するように要求)されることがあります。そうなると、二重課税期間が発生し、既に日本で申告納付した税金の証明・控除(外国税額控除)を行う手間などが発生してしまいます。
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赴任終了時
- 一般論として、赴任開始時より「緩やか」です。ベトナムの居住者としての条件に達していたとしても、日本国の居住者証明書などを提出することにより非居住者として処理することも可能です。
- 帰任時には個人所得税のクロージングを行いますが、最終課税年度について、ベトナム国内の源泉所得のみでクロージングを行うことと国外の源泉所得も含むクロージングでは、その手間が違います。
- 実務的には、既に帰任してから個人所得税のクロージングを行った方が非居住者としての証憑を集めやすいでしょう。
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Covid-19によって予期せぬベトナム長期滞在となり、居住者として個人所得税の申告可否を検討されてきた方も多いと思います。個別の状況によって対処は異なりますが、弊社は原則として、日本での居住者証明書などが準備できれば、この状況下でたとえ183日を超えてしまったとしても、ベトナムにおける全世界所得申告ではなく、国内所得と国外所得として分けられるものと考えています。
しかし、一定の解釈や実務が定められていない法務や税務では、省市によっても担当者によっても異なる対応となったり、公文書(オフィシャルレター)に書かれたガイダンスも不明確だったりします。したがって、アナログではありますが、仮設を立て、小まめに当局(税務署)とコミュニケーションを取っていくことが最善策となります。