いつもお読みいただきありがとうございます。既に各所にて日本語でガイダンスされていますが、2020年6月24日に施行された政令68/2020/ND-CPにより、関連者間取引を有する企業における支払利息の法人税法上の損金算入条件が変更になりました。
これについて内容を整理させていただくと共に、課税年度2017年、2018年、2019年への適用実務についてご案内します。
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政令68/2020/ND-CPによる新たな基準
- 関連者間取引においては、貸し手と借り手がローン利息を恣意的に操作することを防ぐため、支払利息の損金計上(課税控除)に上限が設けられていますが、2017年、親子間取引や関連者間取引の税務を定めた政令20/2017/ND-CPによって、借り手のキャッシュ利益(EBITDA)の20%と定められました。そして、先日6月24日の政令68/2020/ND-CPにより30%に拡大されました。
- キャッシュ利益(EBITDA)とは、M&Aなどに携わっている方であれば明るいと思いますが、利息や税金、有形固定資産の減価償却費や無形固定資産の償却費を引く前の利益を意味します。
- 受取利息がある場合には、支払利息との相殺となり、課税控除できなかった支払利息分や遡及年度における過払分は最大5年間繰り越しできます。課税年度2019年からの適用ですが、課税年度2017年、2018年にも遡及が可能です。
- ただし、金融各社や保険会社、国家借款(ODAや優遇貸付)などは適用対象外です(政令20/2017/ND-CPよりも明確化されました)。
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申請実務について
- 課税年度2019年については、1月~12月の暦年を会計年度として採用し3月31日に年次決算処理が終了している企業も、会計年度を独自に定めまだ年次決算処理が終了していない企業も、政令68/2020/ND-CPに添付されている申請書フォームに従って申請を行うことになります。期限は特に設定されていないようです。
- 課税年度2017年および2018年については、2021年1月1日までに申請を行わねばなりません。20%として計上していた利息費用を30%に引き上げ、借入利息より預金利息および貸付利息を差し引いた正味利息(純利子)を使用します。
- 生じる誤差分については、課税年度2020年に算入し、2020年で相殺しきれない場合には最大5年間繰り越しが可能です。ただし、(2017年分及び2018年分に対して)税務当局の査察(税務調査)を受けていた場合には手順が異なり、税務当局に対し、法人税の再計算申請をしなければなりません。申請書類や証憑により、査察を担当した査察団は再計算を行い、2020年に算入すべく額を確定します。
- これら再確定業務は、企業で行われるのではなく、税務当局にて行われます(税務調査も最終局面ではよく税務当局で行われます)。税務当局は、2017年分及び2018年分の査察結果を変更することはなく、既に追徴課税や不服申立の手順を経て解決された件があった場合でも、これら過去の結果は何ら変更されません。
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例えば、親会社から100万ドルを借り受けていて、年間利息が3%で、年1回の返済で第1回目の支払利息のみ支払った状況、第1回目の支払利息が3万ドルであったケースを考えてみます。
この3万ドルを落とすためには、その他受取利息などを考えない場合、旧法令でEBITDAが15万ドル以上、新政令でEBITDAが10万ドル以上である必要があります。EBITDAは「営業利益 + ノンキャッシュ費用(償却費用など)」と表現されますので、「EBITDA > 営業利益」となります。仮に売上に対するEBITDAが10%だと仮定すると、旧法令においては150万ドルの売上、新政令においては100万ドルの売上が必要になります。
逆から考えてみます。新政令では10万ドルのEBITDAで3万ドルが落とせますが、旧政令の場合には2万ドルしか落とせません、この場合、1万ドルが損金計上できないということになります。