いつもお読みいただきありがとうございます。ある国に現地法人を設立することなく、日本又は他国の自社名義で在庫を持つことを非居住者在庫と言いますが、ベトナムに駐在員事務所を設立することによって非居住者在庫の保有が可能であるか、ご紹介します。
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非居住者在庫の目的と対象倉庫
次の2つのケースに分かれます。
①在庫品をベトナム国外との輸出入に使用する場合。保税倉庫使用。
②在庫品をベトナム国内との取引に使用する場合。保税倉庫又は通常の倉庫使用。
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倉庫の借り手
- 通常の倉庫の借り手には特に法令上の制限がありません。保税倉庫の借り手には「外国の組織又は個人」が含まれています(政令08/2015/ND-CP)。
- 駐在員事務所は、外国法人の「連絡事務所」「市場調査」「外国法人のビジネス促進活動」としての機能を持ち(政令07/2016/ND-CP)、本社のための事業や投資機会の発掘と解されます(商法より)。駐在員事務所は、以前、外国法人(親会社)がベトナムに関して有する契約の監督や推進を行う機能を許されていましたが、現在は許されておらず、一方で、外国法人(親会社)が駐在員事務所に契約を委託するケースが表現されています(政令07/2016/ND-CP)。
以上より、駐在員事務所は、外国法人である親会社に代わって倉庫契約を行うことができます。但し、親会社からの委任状が必要となります。
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会計税務上の処理
- 上記した駐在員事務所による倉庫契約は、駐在員事務所名義にて倉庫契約を行うという意味ではなく、親会社の名義にて駐在員事務所が代理して倉庫契約を締結するという意味になります。したがって、倉庫の賃借費用は駐在員事務所の費用ではなく、親会社の費用になり、インボイスは親会社あてとなります。
- 通常の倉庫を賃借する場合には、付加価値税10%が適用され、保税倉庫を賃借する場合には、付加価値税0%が適用されます。
ただし、在庫の品目や取引の種類によっては、外国契約者税その他の論点についても精査していく必要があります。
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2020年は、ベトナムの現地法人設立計画の延期や、日本人の駐在なしでの現地法人や駐在員事務所の設立を検討する事例など、新たな国外拠点を大きなリスクと見なす企業に多く出会いました。ベトナムは、以前より非居住者在庫が可能ですので、選択肢として加えていただければと思います。