いつもお読みいただきありがとうございます。今回は、現地法人の設立前経費を親会社が立て替え、後から子会社に付け替えるケースと付け替えることをやめるケースを紹介します。
現地法人の設立後経費を親会社が立て替えるケースは、131号レターをご参照ください。
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設立前経費として認められる条件(2019年9月までの従来規定:財務省通達19/2014/TT-BTCの第10条など)
- 現地法人設立に関連する費用であること
- 適正な非現金決済を行っていること(2,000万ドン以上の場合)
- ベトナムに開設した非居住者口座からサプライヤーへの支払いを行うこと。
- 立替払いであることの親会社の決定書があること。
- 立替者(親会社)に対するインボイスや会計証憑があること。
- 第三者に立替払いを委任する場合には、適正な委任状があること。
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現行規定(財務省通達06/2019/TT-NHNNの第8条など)
- 親会社の設立前経費の立替は、ベトナムに開設した非居住者口座からのみならず、外国の銀行口座からでも可能となりました。
- その他は従来規定と同じ原則です。
- なお、立替金は、(1)返金、(2)親子間の国際ローン、(3)資本金への振り替えのいずれかとして会計処理することができます。
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実務上の論点
- (1)の返金を選ぶ場合には、銀行のレギュレーションに従った証憑の提出、書面の準備が必要となります。設立前経費がどのような費用であるかによっても異なります。
- (2)の親子ローンを選ぶ場合には、1年を超えれば中央銀行への登録が必要となり、投資ライセンス(IRC)上に総投資額を設定していない場合には、その調整が必要となります。
- (3)の場合も(2)同様の手続きが発生します((2)より手順が増えます)。
- 設立前経費を返金しなくてよいとした場合、譲渡にかかる法人税20%が発生します。ただし、条件が揃わず、設立前経費の立替として認められない場合には、現地法人の会計帳簿に載せる費用ではありませんので、返金にかかる税金は発生しません。もし、税務当局と解釈が異なる場合には、しっかり説明を行う必要があります。
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設立前経費は、固定資産を形成する費用だけではなく、会社設立費、設立前広告費、設立前研修費も計上可能です。
なお、製造業の場合、現地法人設立後に正式稼働するまで数年を要するケースがあります。これは、設立前経費ではなく、設立後経費となります。税法上は、正式稼働前と正式稼働後(収益計上前と後)に分け、収益計上前に該当する費用は開業準備費用として(開業後の収益に対する)損金性がないものとされています