いつもお読みいただきありがとうございます。今回は、ベトナム現地法人の経営拠点(営業拠点)についての税務を紹介します。ベトナムで設立した法人には、支店、駐在員事務所、経営拠点の設置が認められますが、まずはこれらの整理です。
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経営拠点、駐在員事務所、支店の整理
- 駐在員事務所は、外国法人が設置する駐在員事務所とベトナム現地法人が設置する駐在員事務所では少し違いますが、主に本社を代理した調査活動や折衝活動をするのみで、収益を得ることができません。
- 支店も、特定の業種では外国法人の支店としてベトナムに設立できますが、本レターではそのような支店ではなく、ベトナム現地法人の支店について指すことにします。支店は、本社と独立した会計機能を持つこともできますし、本社に会計機能を依拠することもでき、どちらかを選ぶことができます。これによって活動機能は変わります。
- 経営拠点とは、店舗や倉庫などを思い浮かべていただくとわかりやすいと思います。2018年10月始めまでは、本社や支店のある省市にしか設置できませんでしたが、現在は、本社や支店のない省市にも設置できるようになりました。独立した会計機能を持つことができない点が支店との相違点ですが、支店でも会計機能を本社に依拠するようなケースもあるため(上記の通り)、経営拠点とその活動機能において大差はないと言えるかもしれません。
- 例えば、本社も支店もない省市にて経営拠点を展開する場合、経営拠点には印鑑やインボイス発行機能、独自の銀行口座がありませんので、支店を立てるべきと言えますが、印鑑は定款に定めた上で複数個とし、経営拠点でも保管することができるほか、各種の書類への署名権利も社内規定や委任状の設置によって「分権化」することができます。
- 経営拠点とは、2014年企業法第45条、2020年企業法第44条に、同様の内容が定められています。
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経営拠点の登記と税務
- 経営拠点は、計画投資局に登記しなければなりません。手続きは簡易ですが、本社の活動内容(業種内容)を経営拠点において制限するよう要請されるケースもあります。特に理由がない場合には、従う必要はありませんが、当局の意見を覆すにはしっかりした対話が必要となります(オフィシャルレターやり取りなど含む)。
- 経営拠点は、支店同様に枝番を付した税コードが発給されます。13桁の税コードとなります(現行規定)。
- 1年に1回の事業税(営業許可税・ライセンス税ともいう)が発生します。
- インボイスは本社のものを使用しますが、経営拠点の所在する省市の当局にも通知を行います。
- 経営拠点(の活動)において発生する支出は、法人税や付加価値税における支出、個人所得にかかる支出など、すべて本社にて処理します。本社とは異なる省市に事務所や店舗などを設置する場合、経営拠点(又は支店)の登記がない場合、賃借費用などの支出は損金対象から除外されますので注意が必要です。
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経営拠点について、以前は税務上で不明確な点もありましたが、2019年8月12日付けの税務総局の通知書以降は明確になっているようです。なお、2020年企業法における経営拠点の定義には、特に旧法(現行法)からの変更はありませんでした。
経営拠点の登記は、投資ライセンス(IRC)とは異なり、単なる「届出」として理解されがちですが、実務上は、業種によって、または、地域の計画投資局担当者によって、活動範囲の調整や支店登記の推奨などの意見を返してくるケースがあります。早めの手続きをお勧めします。