現地法人の代表者など本社からの異動する社員は、ベトナムに年間183日以上滞在することにより、ベトナム国内の所得だけではなく、ベトナム国外の所得もベトナムで税務申告する必要が生じます。全世界所得申告と呼ばれています。
その際、異動する社員がもし日本で勤務していれば発生したであろう日本での税額より、一般的には、ベトナムでの税額の方が高くなります。
この差額分を親会社が負担するケースがあります。異動する社員に税務上の不利益を生じさせないためです。
==
異動する社員がもし日本で勤務していれば発生したであろう税額を「理論税額」「みなし税額」「ハイポタックス(Hypotax)」などといいます。
異動する社員に税務上の不利益を生じさせないために、親会社が、税の差額分を負担することを「タックスイコライゼーション(Tax Equalization = TEQ)といいます。
==
ベトナム税務において必要なこと
- 異動する社員がタックスイコライゼーションを受けることが、契約書や出向協定書上に明記されていること。
- 精算にかかる証憑があること。
ポイントとして、契約書や出向協定書上で、理論税額が精算前に控除されるのか(グロス給与)、そうでないのか、具体的な定めが必要です。
精算にかかる証憑とは、一般的に、給与明細や源泉徴収票です。できれば、理論税額の表現や計算表の添付があることが望ましいです。税務調査では、銀行の振込明細を要請され、それぞれを照合されることもあります。
==
親会社としてやるべきこと
- タックスイコライゼーションに関するポリシーの策定
- 異動する社員に対する給与規程・精算規程の策定
===================
グロス給与の場合、実務上、親会社が負担する理論税額は、赴任者がベトナムにおいて納付すべき個人所得税額が確定してから増減します。その後、赴任者や代理納付する現地法人に対して振込を行いますが、これによって再度、赴任者の課税所得を調整する流れとなります。
様々なケースがありますので、契約書や出向協定書の策定段階より、専門の方に相談されることをお勧めします。