ベトナムにおける引当金について定めた財務省通達48/2019/TT-BTCより、様々な引当金についてご紹介します。同通達は、2019年10月より施行され、その際、約10年ぶりの法令変更として注目されました。
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通達48号に定められた引当金の種類
- 「棚卸資産評価引当金」「投資損失引当金」「貸倒引当金」「製品・サービス・工事にかかる保証引当金」の4種類について、年次決算にて法人税より控除できると定めています。
- ただし、商品や原材料の管理規定、投資ポートフォリオや債権管理の規定を定め、リスク管理を行っていることが前提となります。海外投資リスクは対象とならないことに注意が必要です。
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棚卸資産評価引当金
- 棚卸資産について会計・税務証憑が揃っている必要があります。且つ、年次決算時に自社の所有下にある必要があります。
- 以下のように計算されます。
棚卸資産評価(損失)引当金 = 年次決算時の実際の在庫量 × 帳簿上取得原価 - 賞味実現可能価格
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投資損失引当金
- 年次決算時に所有しているベトナム国内にて上場もしくは店頭公開されている企業の有価証券で、年次決算時において市場価格が帳簿上価格よりも低くなっている場合が対象となります。
- 以下のように計算されます。
投資損失引当金 = 年次決算時の帳簿上価格 - 年次決算時に所有する有価証券数量 × 市場価格
- また、非上場および店頭非公開を含むベトナム国内企業への出資持分や株式についても、年次決算時において引当金計上が可能です。
- 以下のように計算されます。
投資損失引当金 = 対象企業における持分比率 × 対象企業の有する実質投資資本 - 対象企業の有する所有資本
- このうち、対象企業の有する実質投資資本とは、対象企業の貸借対照表上に表現される数値であり、通達200準拠時で勘定科目411(拠出済み資本)および412(資本準備金)となり、対象企業の有する所有資本(資本金)とは、前記同様に勘定科目410となります。
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貸倒引当金
- 貸付金のほか、転換社債で市場に登録されず企業が自己所有している債券も含まれ、期限を経過した債権のほか、期限は到来していないが回収困難であると予想される債権も含まれます。
- ただし、取引契約書や貸借契約書、債務誓約書いずれかの証憑と共に、債務(残高)照合書または債務(残高)照合書を要求したことの証憑(配送業者の伝票等)が必要となります。もちろん、社内帳簿も必要です。
- 引当金は以下のように計算されます。
期限を経過した債権:6か月から1年未満の超過・30%、1年から2年未満の超過・50%、2年から3年未満の超過・70%。3年以上・100%
通信業および小売業における債権:3か月から6か月未満の超過・30%、6か月から9カ月未満の超過・50%、9カ月から12か月未満の超過・70%。12か月以上・100%
- 期限が到来していない債権について、もし債務者が倒産、逃走、逮捕、治療不能疾患、死亡などの回収困難が予想される場合には、引当金の上限は100%とされます。ただし、引当金計上に必要な書類、証憑類は、各種ケースによって、且つ債務者が法人か個人かで異なります(ここでは割愛します)。例えば、破産であれば、破産申請状況を証明できる書類を準備し、債務者の支払不能事実を証明しなければなりません。また、債権回収方法について、取り得る策を取ったが回収不能であることを説明する(記録する)必要があります(2019年ハノイ市税務局公文書97637号)。
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製品・サービス・工事にかかる保証引当金
- 自社が提供した製品、サービス、工事に関連して将来的に支出が予想される費用を計上することを意味します。例えば、一定条件のもとに無償で修理保証や追加サービスを約束しているケースが考えられます。
- 引当金の額面は、基本的には顧客との契約書に記載された金額に拠りますが、年間総売上の5%を超えてはならず、建設工事請負価額(請負契約書ごと)の5%を超えてもなりません。
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上記以外の引当金について検討する際、法人税法の細則を定めた財務省通達96/2015/TT-BTCの第4条における「費用計上が認められないケース」を参照します。すなわち、当該条項に準じれば、各種の引当金は(税務上の)計上が可能となりますが、その種類は多いとは言えず、原則として引当金が認められている通達48/2019/TT-BTCとは異なります。
したがって、上記以外の引当金については、その都度、自社にとって必要な範囲で検討していくことになるでしょう。