2020年、あけましておめでとうございます。本年より、弊社の活動の一端より、ベトナム事業に関連する情報を配信していきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。予定では、会計税務、法務、人事労務と分け、専門的な内容ばかりではなく、専門的ではない内容にも触れていきたいと考えています。
第1回は、ベトナムの会計基準、会計制度についてです。
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会計基準
- 日本では、会計基準は複数から選ぶことが可能となっています。日本の会計基準、米国の会計基準、国際会計基準(IFRS:元は英国の会計基準)、又は日本の会計基準とIFRSの間に位置付けられた基準(J-IFRS = JMIS)です。
- 一方のベトナムでは、原則としてベトナムの会計基準(VAS)以外の会計基準を選ぶことはできません。
主な違いは、IFRSが時価会計であることに対し、VASは原価会計であることでしょう。ベトナムの会計法には、時価会計の概念も記載されていますが、実務的な指針はありません。
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時価会計と原価会計の本質
- 会社の経営は、資本(Equity)や負債(Liability)を運用して、資産(Asset)を生み出します。貸借対照表の右左を思い浮かべてください。「資産(左)」が「資本+負債(右)」より大きければ利益剰余金が発生し、減価償却や引当処理のあと、投資家(出資者及び債権者)への配当利益・返済が発生します。
- その際、今後の会社経営に必要な内部留保を残さずに配当利益を決めてしまった場合、キャッシュフローに支障をきたすかもしれません。そこで、資産を取得原価ではなく、時価で再評価しようというのが時価会計の基本的な考えとなります。
- 国際的な会計の歴史を紐解いてみると、英国と米国を中心に20世紀後半から時価会計が主流となりました。時代の流れと共に、会社の所有と経営を分離し、投資家(所有者)を保護する観点(所有者保護)に移り変わってきたと言われています。
すなわち、ベトナムの会計基準は、会社の所有と経営を分離した前提となっておらず、つまり、顔の見える者同士での会社経営を想定しているとも言えます。経営に携わらない投資家にとっては公正とは言えないでしょう。
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ベトナムの会計制度
- 少々ややこしいですが、会計基準と会計制度は異なります。ベトナムの会計制度は、会計基準とは必ずしも合致しておらず、財務省によって決められた勘定科目に沿った簿記と経理のマニュアル的内容になっています。
- 外資系企業にはチーフアカウンタントが必要ですが(名義借り可能)、主な業務はこれら会計制度に沿った簿記と経理の業務になりますので、本社への連結対応、持分法適用会社としての対応はトレーニングが必要となります。
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ベトナムに駐在する現地法人社長の多くは、会計や税務の専門のトレーニングを受けた方ではありません。
本社への会計報告は、ベトナム人チーフアカウンタントや外注の会計会社に任せてしまっていることも多いと思いますが、子会社の経営者として、少しずつ会計の本質にアンテナを向けてみてください。