いつもお読みいただき、ありがとうございます。2019年労働法の2021年1月1日からの施行に向け、2020年7月から10月にかけ、各種の政令(Decree)や通達(Circular)が公布されていくでしょう。
その中より、女性労働者および男女平等に関する政令の草案を紹介します。
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就業規則などに使われる主な内容
現行の政令は85/2015/ND-CPとなりますが、就業規則などによく使用される次の2点については、新政令草案においても変更はないようです。
- 女性の正社員は、生理期間中、1か月のうち少なくとも3日間において、1日30分の休憩時間を取得することができる。
- 12か月に満たない子供を育児中の女性の正社員は、1日60分の休憩時間を取得することができる。
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新政令草案における新たな内容
以下は、新たな内容です。
女性従業員が休暇を取る必要がなく、雇用者が従業員を働かせることに同意した場合、休暇期間中に得られるべき給与に加えて、同等額以上の追加支払いを受ける権利がある。ただし、当該勤務時間は残業時間として計算されるわけではない。
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新政令草案において削除された内容
妊娠中の女性従業員の「一方的な労働契約の解除権」について定められていましたが、2019年労働法の第138条に同様の定めがなされたことにより、新政令草案からは削除されています。以下は労働法第138条の内容です。
- 妊娠中の女性労働者は、勤務の継続が胎児に悪影響を与えることについて権限を有する診断所や治療所の確認がある場合には、労働契約の一方的解除や一時停止を行うことができる。
- 労働契約の一方的な解除や一時停止を行う場合、勤務の継続が胎児に悪影響を与えることについて権限を有する診断所や治療所の確認書を添付することにより、雇用者に通知しなければならない。
- 労働契約の一時停止である場合には、一時停止期間は雇用者との合意によるものの、最低期間は、権限を有する診療所や治療所が一時休暇を指示した期間でなければならない。もし、権限を有する診療所や治療所が一時休暇の期間を指示していない場合、雇用者との間にて一時停止期間を合意するものとする。
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ベトナムでは、都会の生活であっても、妊婦の女性は、古き良き日本のように親族や近隣の方々の助けが得やすいと感じます。バスや飛行機などの公共交通機関でも、譲り合い、助け合いの精神が「自然」です。
ただ、公共交通機関の発展が遅れており、移動手段のメインは依然としてバイクです。これは、我々日本人からすると、妊婦に対して大きな影響があるように見受けます。道路渋滞や大気汚染などの問題もあります。
他方、社会保険制度や医療が発展してきているとはいえ、一般の人々が通院する病院の利便性が劇的に変化しているわけではありません。救急車を呼ばなければならないような場面でも、自力解決するしかないケースが多いのがベトナムの現実です。
これらを総合すると、今回ご紹介したような法令は「最低限」に過ぎません。若い女性従業員が活躍する職場では、雇用者が独自に配慮していく必要がありそうです。