有給休暇には、年次有給休暇(年間で基本12日)と有給の私的休暇(自身や家族の結婚や死去など)があります。
それでは、試用雇用期間については、有給休暇は適用されるのでしょうか。
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年次有給休暇の算定法
- 現行法規(2012年労働法。*2021年1月より新労働法)の第111条1項には、年次有給休暇12日間を得るためには、「同一の雇用者のために12か月勤務した被雇用者」とあります。これは、「12か月以上の雇用契約を締結した者に対して」と解釈を行うのが一般的です。
- 実務的には、12か月以上の雇用契約期間があれば、12か月以内に退職した者であっても月1回として年次有給休暇を計算します(政令45/2013/ND-CPの第7条)。
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試用期間における有給休暇の原則
- 試用期間における有給休暇は絶対に発生するというわけではありません。
- 原則は、試用期間を終えて正式雇用期間に入った場合に試用期間も有給休暇の計算基礎期間として参入します。
※ベトナム人総務の方でも誤解している方が多いようです。
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試用期間における有給休暇の認識齟齬をなくすための実務
試用期間における有給休暇に対して、雇用者と被雇用者にて認識が異なるケースがあります。
まず、試用雇用契約と正式雇用契約を分けているか否かという論点があります。
- 2012年労働法の第26条1項には、試用雇用契約が「締結できる」と規定されています。「できる」という表現の解釈が難しいところです。
- 慣習的には、正式雇用契約に試用期間を記載する事例が多くなっています(2021年より施行される新労働法では、正式雇用契約に試用期間を記載することが標準となります)。
- しかし、この場合、例えば、年次有給休暇は、契約書に定められる12か月以上の期間に対して発生するという解釈が発生します。例え、試用期間の2か月以内に退職するとしても、12か月以上の期間が定められた雇用契約書であったから、試用期間にも年次有給休暇があったと解釈されるのです。
次に、試用雇用契約と正式雇用契約を分けたものの、試用雇用契約に(年次)有給休暇についての定めがない場合、これは、政令45/2013/ND-CPの第7条を根拠として、被雇用者より(年次)有給休暇を要求できることとなります。
すなわち、試用期間は、年次有給休暇の対象期間には含めないと定めることが可能です。
そのように定めた場合に限って、試用雇用期間における(年次)有給休暇は、被雇用者の権利ではなくなります。
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ジョブホッピングの激しいベトナム若年層ですが、試用雇用契約だけを結び、雇用者や労働環境を「まず見る」という方たちが一定数います。売り手市場なのです。これを踏まえ、試用期間をどのように有効に使用するか、自社に合った設計を行うべきでしょう。