メイン事業とは別にサブ事業として営業支援を行い、顧客候補を紹介し、取引が成立したことによる手数料やインセンティブ収入をもらうケースについて、ベトナム法に準じてどのように考えればよいかをご紹介します。
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手数料やインセンティブの性質
- 商品や製品の販売にかかる営業支援では、「物」を介するため、エージェント(代理)、コンサルティングの区分はわかりやすいと思います。一方で、無形であるサービス役務の提供については、曖昧な認識になってしまうかもしれません。うっかり、契約書において「エージェント」や「代理」という言葉を入れてしまっているケースを見かけます。
- 例えば、依頼元(A)にその顧客候補(B)を紹介し、当事者同士(AとB)で契約を締結し、そこから手数料やインセンティブを得ることは、一般的に、コンサルティング契約となります(何に対して手数料やインセンティブを設定するかによって、仲介契約となります)。
- 外資系企業におけるこのコンサルティング契約は、人材紹介や不動産紹介などの特定の業種を除けば、IRC(投資登録証明書)上に一般的なコンサルティング業種があれば可能です。
- ただし、エージェント(代理)や仲介という行為に対しては、IRC(投資登録証明書)における該当する販売行為又はサービス行為についての業種登録が必要となります。業種登録の有無は、業種に関する行政罰則の対象となるばかりではなく、税務上の否認リスクに繋がります。
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収納代行
- 収納代行とは、紹介した顧客候補(B)より、依頼元(A)に代わって金銭を代理で受領する行為を意味します。
- これは、契約書にその旨(手順、責任、義務など)をしっかり記載すれば、コンサルティング業種で可能でしょう(消極的解釈もありますが、この論点について投資関連当局はそれほど厳しくありません)。しかし、お金の流れが自社を経由しますので、会計税務上の観点を契約書上に表現する必要があります。
- 例えば、医療ツーリズムなど特定の業種では、IRC上でのコンサルティング業種の登記において「活動予定の詳細業務」について記載しておかなければ、税務上の否認リスクは高まります。一般的に、税務当局は、投資関連当局のような好意的見方をしてくれることはありません。
- もし、国外企業との取引にこれらを当てはめる場合、具体的には、自社が在ベトナム企業で、依頼元(A)がベトナム国外企業、顧客候補(B)が在ベトナム企業や個人に当てはまる場合、契約書の整備は銀行送金時に関連します。収納代行部分については当然に外国契約者税実務を取り決め、自社の手数料やインセンティブ部分についての付加価値税ないしは外国契約者税の内外も明示しておく必要があります。
- さらに、依頼元(A)が親会社である場合には、関連者間取引として企業法や定款に沿った手続き、又はロイヤリティーと見なされないためのリスクヘッジが必要となるでしょう。
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ロイヤリティーの基本的な理解
- ロイヤリティーとは、有形無形の技術・資産・権利などに対して得る利益を意味します。フランチャイズ契約などのライセンス許諾契約形態にて使用されるほか、大手企業を中心に、親会社と子会社間に(子会社の事業全体・商品群全体に対して)使用されることも多いでしょう。
- 論点がいくつもありますが、原則としては、ロイヤリティーには明確な計算根拠が必要です。特に親子間取引(関連者間取引)については、移転価格文書の免除に該当するケースであっても、ロイヤリティーが何に基づいているのか、算定基準はどのようになっているか、市場価格との比較は適切かなど、可視化しておいた方がよいでしょう。
- 「ロイヤリティーが何に基づいているのか」という部分について、特に有形物や知的財産権が存在しない場合には、日本では「ノウハウ」として理解されることも多いのではないでしょうか。ベトナムでは、民法より知的財産法と共に分離された技術移転法に「ノウハウ」の定義が示されています。「ノウハウ」登記の必要性について紆余曲折がありましたが、2017年以降は登記しなければならないことになっています。
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今回ご紹介した範囲は、法務と会計税務の双方を見据える必要があります。知らぬうちの脱法やリスクを防ぐためにも、セカンドオピニオンなど、気軽にご連絡をください。