ベトナムにおける契約書では、どのような場合にベトナム法ではなく海外法に準拠できるのでしょうか。
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準拠法の選択(民法典の第663条、民事訴訟法の第464条)
第1条件は、次のいずれかの場合となります。
- 当事者のうち少なくとも1者が海外である場合
- 当事者は全て在ベトナムであるが、契約の発生、調整、実施、解除が海外である場合
- 当事者は全て在ベトナムであるが、契約対象が海外である場合
※上記のうち、契約の発生、調整、実施、解除が海外である場合という部分は、解釈に幅が出るかもしれません。
第2条件
- 双方が海外法への準拠に同意する場合
その他の条件(民法の第683条)
- 契約対象が不動産である場合、所有権その他の権利移転は、賃借権や使用権を含み、不動産が在する国の法律に従って実施されなければならない。
- 労働契約、消費契約において、ベトナム国の法律に準ずる労働者や消費者の権利がある場合、ベトナム法を適用しならない。
- 当事者同士にて準拠法を変更することはできるが、その際には関係する第三者の利害を害することがないようにしなければならない。
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契約書言語
契約書にベトナム語が必須となるのは次のケースになります。
- 消費者権利保護法に定められる消費者との契約
- 技術移転法(2017年改正法)に定められる移転技術にかかる契約
- 通信技術法に定められる郵便使用提供にかかる契約
- 建設法に定められるベトナム企業同士での工事契約
民法や商法に規定される各種の契約書では言語の強制はありません。
しかしながら、以下の場合には、当局よりベトナム語版(翻訳版)を要求されます。
- 税務上の証憑としての義務履行
- ベトナム国での紛争解決
- 会計法を根拠とした監査書類の作成時
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合意管轄については、仲裁が最も多く使われているでしょう。
裁判も仲裁も国外指定は可能です。例えば、日本とベトナムの間の場合、日本での(ベトナム法に基づく)判決はベトナムで再審理されることなく実施されることが民事訴訟法に定められています。しかし、ベトナム国外裁判での判決がベトナムにてそのまま執行された事例は皆無と聞いております。カントリーリスクの一つと言えるでしょう。