いつもお読みいただきありがとうございます。今回は、ベトナムの教育分野について、2020年7月1日より施行された2019年教育法に沿って、法律的側面からその構造をご紹介します。
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ベトナム国家の教育システム(2019年教育法の第6条2項)
プリスクール(Preschool) | 保育園又は託児所(Junior Kindergarten:3か月児~36か月児まで)、幼稚園(Senior Kindergarten:3歳児~6歳児まで)など |
一般教育又は義務教育(General Education or Compulsory Education) | 小学校から前期中等学校(Lower Secondary)及び後期中等学校(Upper Secondary)まで |
職業訓練教育(Vocational Education and Training) | 初級・中級から専門学校まで(専門学校は「高等職業訓練校」などと呼ぶ場合もあり) |
高等教育(Higher Education) | 大学から修士及び博士課程まで |
- 2005年教育法及び2009年改正教育法(旧法)では、上表の職業訓練教育および高等教育の部分が少し異なりました。
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教育事業を行う場合
- 外資が入る場合には一般的に「私立」となります。
- 分野ごとに、資本要件・組織及び人材要件・敷地又は施設要件・カリキュラム要件が異なりますので、これらをチェックします。
- 現在、基本的に独資(100%外資)で可能ですが、ベトナム人を対象とする事業はここ数年で開放されたばかりですので、外資事例はまだ多くなく、且つ要件があります(ベトナム人生徒要件)。
- 上記より、教育事業活動ライセンスや教育施設ライセンスが必要となります(各論は別の機会に紹介します)。
- 毎年定期的に教育事業の報告を行う義務があります。
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外資による教育施設の種類分け(政令86/2018/ND-CPの第28条など)
短期訓練・養成施設 | 語学学校や学習塾、その他技術訓練施設など(但し職業訓練施設とは異なる) |
プリスクール施設 | 保育園、託児所、幼稚園 |
一般教育(義務教育)施設 | 小学校、前期中等学校、後期中等学校 |
大学教育施設 | |
外国大学のベトナムにおけるキャンパス | |
職業訓練施設 | 初級、中級、専門学校 |
Eラーニングシステム | 訓練・養成施設、大学教育施設 |
- 上表のうち、短期訓練・養成施設と職業訓練施設は混同されやすいですが、活動の目的が異なりますので、それぞれ別の法令にて定められています(法令も不明瞭な部分があります)。
- Eラーニングシステムも法令が分別されています。例えば、語学カリキュラムを行う場合、語学学校の活動にかかる教育事業活動ライセンスは必要ですが、教育施設ライセンスは不要です。教育施設の代わりとなるウェブサイトの(当局への)登録は必要ですが、ライセンス取得よりは簡単な作業となります。
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教育事業は、正式に稼働ができるまで、その手続きに非常に時間がかかる分野の一つです。最低でも初回申請後3~4か月程度、長ければもっとかかります。したがって、M&Aで着目されてきた分野でした。
しかしながら、M&Aによって投資ライセンス(IRC)は不要だとされても、教育事業活動ライセンスや教育施設ライセンスを(M&A後すぐに)更新しなければならないケースもありますので、事前に慎重な確認が必要になります。
なお、昨今はYoutubeや各種SNSを通じた動画配信による「教養配信」が爆発的な流行になっていると思います。新しいEラーニングの形とでもいうのでしょうか。集金モデルも日々変化していると聞きます。今後、どのように法令化されていくのか注目すべきところでしょう。
また、自社の商品やサービスについて顧客先にセミナー説明などを行うこと、または自社の持つ技術や知見について顧客先に有料でセミナー説明などを行うことについて、教育事業(職業訓練)に該当するかというご質問を受けることがあります。
前者はアフターサービスですので、不安であれば商品やサービスの契約書にその旨を記載しておく、または附属書を別途作成すれば良いでしょう。後者は一般的に、コンサルティングサービスで問題ないと考えます。ただ、定期的に行い、不特定多数の個人に対して応募をかけるようなスタイル、一定の資格証や修了証などを発行するような場合には、教育事業(職業訓練)として精査したほうがよいと考えます。