環境影響評価報告書(EIA = Environmental Inpact Assessment)が必要となる新規の投資プロジェクトにおいて、投資プロジェクトの登記(IRC)が「先」であるか、EIAの承認が「先」であるか、長く議論されてきています。
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従来の経緯と今後の動向
- 2016年の投資法改正では、その草案において、投資法と環境保護法の間におけるEIAがIRCより「先」であるか否か、投資方針決定が必要となる投資プロジェクトでは投資方針決定とEIAのどちらが「先」であるか、について、IRCを「先」と定めましたが、その後、国会で否決されました。
- 2018年1月11日、資源環境省(MONRE)が公式見解を出し、EIAがIRCや投資方針決定より「後」であることを明確にしました。しかし、当該見解は法令ではないため、各省市は、省市レベル人民委員会の決定に従うこととなり、省市によってレギュレーションが異なりました。
- その後、2019年7月1日より施行された政令40/2019/ND-CPにより、実質的にEIAはIRCより「先」と定められました。しかし、実務上、IRCより前にEIAを作成、申請することは不可能に近く、弊社が知る新規投資プロジェクトではEIAはIRCの「後」に実施されてきました。
- 現在、最新の環境保護法改正案にて、新規投資プロジェクトの区分けが行われています。
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EIAにおいてFS(Feasibility Study)は必要とされるのか
- 従来規定(通達27/2015/TT-BTNMT)では、EIAにおいて「FS、投資プロジェクトレポートまたは同等書類」が必要とされていました。
- 現行規定(政令40/2019/ND-CP)では、EIAの前に「FS、経済技術レポートまたは同等書類」が必要とされています。FSや経済技術レポートというのは、建設法にてその内容項目が定められる書類で、建設コンサルタントなどによる作成、承認作業を要します。
- 環境コンサルタント(EIAの作成コンサルタント)は、FSや経済技術レポートの添付を頑なに要求する場合があります。しかしながら「同等書類」でもよいとして交渉が必要です。
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(ベトナムの)環境コンサルや建設コンサルとは
- 現行法令では、環境コンサルタント個別のライセンスはありません。2016年以前には条件付き投資分野でしたが、当該規定は廃止され、環境コンサルタントの条件を定めた規定も2018年10月より廃止されています。したがって、独資でも可能な分野と解釈できます。ただし、実務の上では、ベトナムの資源環境省(MONRE)や省市レベルの資源環境局(DONRE)、プロジェクト地域の有識者などと環境に関する詳細を議論する能力が必要とされます。
- 建設コンサルタントは、建設業ライセンスの1つの分野です(参照:弊社73号レター)。
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EIAの作成を手伝う環境コンサルタントの業務では、地域の談合などが生まれやすくロビー費用などが発生するケースも多いと聞きます。環境コンサルタントによっては、プロジェクト金額に対してパーセンテージを掛けて見積もるケースもあると聞きました。例えば、プロジェクト金額が100億円であれば、その1%で1億円のコンサルフィーという算出です。
もちろん、このような決まりはありませんし、慣例もありません。
EIAのほかに、手続きが難航するものとして防火消防に関する手続きがありますが、こちらも消防コンサルタントと名乗る方々がいます。当局からの紹介で出てくるケースもあります。
したがって、これらの「交通整理」も含め、法務実務として請け負うケースもあります。