ベトナムに対する外国からの直接投資にかかる外国為替管理ガイダンスである中央銀行通達06/2019/TT-NHNNが、2019年9月6日より施行されています。中央銀行通達19/2014/TT-NHNNに替わる重要な法令です。
その中より、外国直接投資企業の定義について、ご紹介します。
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従来規定(通達19/2014/TT-NHNNの第3条2項)
外国直接投資企業とは、外国投資家が設立時の資本払い込みに参加し、会社や投資活動の管理に参加するベトナムにおける企業をいう。
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新規定(通達06/2019/TT-NHNNの第3条2項)
外国直接投資企業とは、以下のような企業をいう。
a) 出資者又は株主に外国投資家がいる企業として設立され、投資に関する法律に従って投資登録証明書の発給手続きを行わなければならない企業。
b) 前項の定めに属さないが外国投資家が存在する企業であり、外国投資家の定款資本所有比率が51%以上である以下のような企業。
i) 外国投資家が資本払い込み、株式や持分の購入をすることによって(条件付き投資分野又は条件なし投資分野)、定款資本の51%以上を所有している企業
ii) 分割、吸収、合併により外国投資家の定款資本所有比率が51%以上となった企業
iii) 特定の法律に従って新たに設立される企業
c) 投資に関する法律に従って、外国投資家がPPP形式のプロジェクトを実施するために設立するプロジェクト企業
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着目すべき点
新たな定義により、直接投資口座(DICA)を開設・利用できる企業の範囲が変更されることとなり、通達06/2019/TT-NHNNの施行後、次のような問題が生じることとなりました。
- 間接投資口座(IICA)を開設・利用していた外国投資家が、企業の定款資本の51%以上を所有する場合には、DICAに変更しなければならないこと。
- DICAを開設・利用していた企業が、外国投資家の定款資本所有比率が51%未満になった場合には、DICAを閉鎖しなければならないこと。また、非居住者の外国投資家は、そのDICAを通じて借入や返済を行っている場合を除き、IICAを開設しなければならないこと。
経過規定として、通達06/2019/TT-NHNNの施行後12か月が定められていますので、2020年9月6日までとなります。
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ベトナム企業を買収するM&Aにおいては、国外から買収する場合(非居住者と居住者の取引)のみDICAを経由する必要があり、居住者間又は非居住者間の場合にはDICAを経由する必要がなくなりました。
この変更点は、様々なケースにおいて以前よりも実務が簡素化されると予想される一方、DICAを経由しなければならないケースにおいて以前よりも実務が複雑になるイメージがあります。
M&Aは、投資関連当局との手続き、銀行との手続き、売却側の税務手続きなど、様々な手順を整理する必要があり、複数の専門を持つ専門家に相談されることをお勧めします。