2019年5月より独資にて可能となった人材派遣業、そのライセンスについてご紹介します。
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人材派遣業の定義
労働法に「労働派遣」として定められます。2012年労働法と2019年労働法では少し異なりますが、2019年労働法を下記します。
- 労働派遣とは、被雇用者が労働派遣企業である雇用者と労働契約を締結し、その後、別の雇用者の下に派遣され、その管理下で就労することをいい、この間も労働派遣企業との雇用関係は維持されるものである。
- 労働派遣業務は条件付き業種であり、労働派遣ライセンスを受けた企業によって実施され、定められた一定の業務のみ適用される。
労働派遣とは、ベトナム国内のみでの労働派遣をいいます。紛らわしい業種として「海外で勤務する労働者の提供および管理業務」いわゆる労働者の送り出し機関もあるので注意してください。こちらは外資系企業には認められません。
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労働派遣ライセンスの条件(政令29/2019/ND-CP)
- 現地代表者(法定代表者 兼 事業責任者)が、直近5年間のうち、人材派遣業において3年以上(36か月以上)の歴を有すること。無犯罪証明。
- 供託金(エスクロー):20億ドン(約1,000万円)
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労働派遣ライセンスでできること(政令29/2019/ND-CP)
- 次の分野への12か月間の人材派遣。
(1) 通訳・翻訳・速記, (2) 秘書・総務, (3) 受付, (4) 旅行ガイド, (5) 販売サポート, (6)プロジェクトサポート, (7) 生産用機械のシステムプログラミング, (8) テレビ・通信設備の生産・設置, (9) 建設機械・生産用の電気システムの操作・検査・修理, (10) 建物・工場の清掃, (11) 資料の編集, (12) ボディーガード・守衛, (13) テレマーケティング・カスタマーケア, (14) 会計・税務, (15) カーケア・メンテナンス, (16) 工業用図面のスキャン・設計・内装, (17) 車の運転, (18) 船舶管理・運営・保守などサービス, (19) 石油掘削承知の管理・監督・運営・修理・保守などサービス, (20) 航空機制御、航空機サービス、航空機及び航空機器の保守・修理・管理、飛行操作・飛行監視
- 12か月間の派遣が終わった後、同じ労働者を派遣できるか否かについて、旧政令では禁じていましたが、現政令では禁じていません。
- ライセンス有効期間は5年間で、延長可能です(延長回数制限はありません)。
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労働派遣ライセンス取得の流れとその後
- IRC・ERCにて業種登録(VSIC:7820)を行った後、エスクローを実施します。その後、労働派遣ライセンスの申請取得となります。
- 本店や事業拠点においてライセンスの掲示義務があります。
- 6か月ごとに当局へ定期報告する必要があります。
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人材派遣業は、以前は合弁会社が必須となっていました。外資側は、資本金を含めた総資産が100億ドン(約5,000万円)以上とされ、人材派遣業の経験は5年が必要とされていました。
この分野は、2019年より多くの企業に問い合わせをいただきましたが、独資での進行については迷われる企業が多く、M&A案件や合弁案件として進めた企業が多かったように見受けます。
2020年から2021年にかけて、労働法、企業法、投資法、建設法など多くの法律がメジャーチェンジするタイミングです。人材派遣業は、派遣対象となるベトナム人労働者の労務が重要で、質の高いガバナンス、各種規程が必要とされますので、ぜひ、日系の独資進出が増えていただきたいものです。