ベトナムにおける訴訟は複雑です。したがって商事紛争が起きてしまった場合、まずは話し合いを原則とし、その後、調停や仲裁の形式を選択していくのが一般的です。これらに基づき、契約上、ベトナムにおける合意管轄を定める際は、調停や仲裁として記載するのが一般的です。
今回は、2018年10月に公開された幾つかの判例より、賃貸借契約の期限前解除にかかる紛争事案をご紹介します。
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判例21号の要旨
契約解除の条件について合意が定められていない賃貸借契約において、借り手が期限前に契約を解除しようとし、貸し手がそれに同意しない事案です。
裁判所は借り手に過失があるとして、借り手に対して、貸し手に生じた損害の賠償義務を認めました。 賠償額としては、契約の残存期間の賃借料に加え、当事者間で合意されたその他の金額が考慮されます。
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この判例からは、賃貸借契約を期限前に解除したい場合、契約書上で具体的な条件が規定されず、貸し手の同意を得られない場合には、貸し手に生じた損害について賠償責任を負うことが理解されます。
例えば、ベトナムの大手不動産会社などの賃貸借契約書は非常に一方的な場合があります。ベトナムの大手企業の契約書式を交渉していくのは非常にハードな業務ですが、契約解除の際の苦労よりは、契約締結前の苦労の方が良いかもしれません。
ベトナムの紛争はまだまだ「人治」と言えます。契約書作成においても、杓子定規の法律解釈のみならず、先方とのぎりぎりの合意形成イメージ、紛争時の抗弁イメージなど、具体的な実務を想定したものにする必要があるでしょう。