いつもお読みいただきありがとうございます。今回は、自社の所有物である工場を他社に貸し出したいという場合、不動産事業の登録(200億ドンの資本金など)が必要であるかどうか、というテーマになります。
サブリースではなく、あくまで自社の所有物(登記済み)である工場を他社に貸し出したいケースです。
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不動産事業の各種原則
不動産事業の定義は、次のように定められています(2014年不動産事業法第3条)。
- 不動産事業とは、営利目的にて、不動産の建設・購入・売却を目的とした譲受・譲渡、不動産の賃貸・転貸・割賦販売、不動産の仲介サービス・取引所サービス・コンサルティングサービス・管理サービス、を実施するために投資を行うことである。
したがって、自社の所有物であっても工場を他社に貸し出すという行為は「不動産事業」と見られます(見られる可能性が高いです)。
次に、不動産事業を営む条件は以下の通りとなっています。
2014年不動産事業法の第10条(現在) | 2014年不動産事業法の第10条 (2020年投資法による修正:2021年1月1日より施行) |
不動産事業を営む組織・個人事業主の条件
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不動産事業を営む組織・個人事業主の条件
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さらに、政令76/2015/ND-CPの第5条に詳しく定められています。
不動産事業法の第10条2項に定められた組織・家族世帯・個人が、売却、譲渡、賃貸、割賦販売を行う場合で、企業を設立しなくてよいのは、次のケースである。
- 組織・家族世帯・個人が、売却、譲渡、賃貸、割賦販売を行う場合で、対象不動産が事業用不動産プロジェクトへの投資ではないもの、又は事業用不動産プロジェクトへの投資であっても総投資額が200億ドン未満であるもの(土地使用料を含まず)。
- 組織が破産、解散、企業分割の目的において土地使用権の譲渡、住宅や建物の売却を行う場合
- 信用機関、外国銀行の支店、信用機関の資産管理会社(AMC)、ベトナム信用機関の資産管理会社(VAMC)などの組織および個人が債権回収の目的において保全・担保している土地使用権や不動産プロジェクトの譲渡、住宅や建物の売却を行う場合
- 組織・家族世帯・個人が、紛争や不服、訴訟に際して、裁判所や権限を有する国家機関の決定によって土地使用権の譲渡、住宅や建物の売却を行う場合
- 組織・家族世帯・個人が、売却、賃貸、割賦販売のために住宅の建設投資を行う場合で、住宅法の定めによって企業設立しなくてよい場合
- 機関や組織が、権限を有する国家機関によって公共資産の管理について定めた法律に準じて国家所有となっている土地使用権の譲渡、住宅や建物の売却を許可された場合
- 組織・家族世帯・個人が、自身の所有する不動産の売却、譲渡、賃貸、割賦販売を行う場合
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結論
以上が現規定の全てですので、自身の案件が上記の規定に明らかに当てはまる場合には、不動産事業は不要であり(200億ドン以上・約1億円の定款資本)、明らかではなく微妙な場合には、当局に対して公文書でヒアリングを行う必要があります。
なお、2020年投資法により、2014年不動産事業法からは200億ドンルールがなくなり、一見して不動産事業の最低資本規制がなくなったように見受けますが、当該ルールは政令76/2015/ND-CPにも定められており、現時点で特に変更される予定は聞いていません。
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ベトナムにネットワークがある企業であれば、工業団地ではない工場の貸し出し案件を検討する機会があると思います。貸し手の法的背景は上記の通りなのですが、借り手の法的チェックポイントは、上記(の貸し手与信)以外に、当該工場での自社の活動が土地使用目的に合っているか、環境保護や防火消防などの規定を十分に満たせそうか、且つ本社や支店としての登記が可能であるか、など複数に及びます。