ひと昔前は、外資制限業種であった飲食店やカフェ、現在は100%外資での営業が可能です。
今回は、開業前に知っておくべき手続きや法令などについて整理します。ただ、投資ライセンス(IRC)や企業登録証明書(ERC)、ビジネスライセンス(BL)の取得部分は割愛します。
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食品安全条件基準証明書
店舗ごとに必要となる基本的な届出です。日本でいう保健所の営業許可でしょうか。但し、ホテル内レストラン、マイクロ店舗と見なされる自動販売機など(での食品提供)は免除されます。厨房における動線、水回り、食品保管設備、従業員のヘルスチェックなどが主な確認項目になります(食品安全法にかかる政令15/2018/ND-CPの第11条など)。
機能性食品に該当する商品や加工済み輸入食品を取り扱う場合、または規模の大きい店舗の場合など、別途ライセンスや検査を要するケースもあります。
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防火消防や安全に関する法令遵守
総利用面積が1,200㎡以上又は経営世帯が300以上の建築物内市場又は半建築物内半露天市場、店舗の総面積が300㎡以上又は容積が1,000㎥以上のショッピングセンター、スーパー、百貨店については、当局へ事前通知する必要があります(防火消防法にかかる政令79/2014/ND-CP)。
該当しない場合、消防用設備設計について当局の審査対象となります。一般的には当局の検査を受ける必要はないと考えられているようですが、基本的な防火消防規則、防火消防に係る機器設置図及び避難地図、非常口掲示や消火器設置については、営業開始後も定期点検や報告の義務がありますので注意が必要です(政令79/2014/ND-CP及び公安省通達66/2014/TT-BCA)。
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環境保護に関する法令遵守
環境保護に対する手続きとして一般的に知られているのは環境影響評価報告書(EIA)や環境保全計画(EPP)です。飲食店やカフェは、以下の条件を満たせば、免除となります。
- 飲食提供サービス部分が200平米未満のレストラン
ただし、この場合でも一定の排水量、排気量、固形廃棄物排出量に達する場合には、EPPの対象となるとされています(政令18/2015/ND-CPなど)。
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酒類販売ライセンス
飲食店やカフェにおいて酒類を販売する場合、酒類販売ライセンスが必要であるとの情報を見かけますが、通常は必要ありません。酒類販売ライセンスとは「酒類の小売にかかるビジネスライセンス(BL)」をいい、飲食店やカフェにて「メニューに掲載した商品又はサービスの提供」は、酒類の小売範囲とはなりません。
※2020年5月1日追記:ご指摘を頂いたため、追記いたします。2017年11月1日より2020年3月21日までは、「酒類の現場提供にかかるビジネスライセンス(BL)」というものがございました。これについて、飲食店が該当するか否かで実務上の違い(解釈上の違い)があり、飲食店の場所によっては不要とされるケースがありました。且つ、申請時の書類が複雑で一般的な飲食店には準備しにくいものもありました。現在は、アルコール度数5.5度以上について当局への「登録義務」がありますが、この制度は施行後2か月に満たないため、どのような運用になっていくかは今後の実務にて検討していくべき点となっています。
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その他
省市レベルの人民委員会によって、営業時間の規制などがありますので、チェックしておく必要があります。
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法令遵守の観点から申し上げるのであれば、上記を全て満たすことが可能な出店地を選ぶ必要があります。
一般的に、商業モールは上記を全て満たしており、一方で、路面店については、自らチェックが必要になります。
つまり、路面店の形態にて商売を行う場合には、飲食店やカフェに限らず、上記のような観点より自らチェックを行う必要があります。もちろん、店舗の詳細によって、細かな規制は異なるでしょう。
(余談)
弊社は、2010年から2013年まで、ベトナムで飲食店を経営しておりました。当時は外資100%では認められず、2名以上有限責任会社の合弁形式で推進しました。
弊社日本側の飲食店事業(焼肉店経営など)の実績に基づいて、A5ランクの和牛をベトナムに輸入仕入れする計画がありましたが、ベトナムの店舗物件の賃借契約後に日本での口蹄疫問題が発生し、ベトナム側は和牛輸入禁止となりました。
当時と今では、ベトナムの外食事情も大きく変わりました。日系経営店舗の成功事例も数多く聞くようになっています。