いつもお読みいただきありがとうございます。今回は、路面店舗における販促イベント実施に気を付けるべきポイントについて解説いたします。販促活動についての基本的な定義や会計税務上の留意点は、弊社133号レターでも書いておりますのでご参照ください。
==
販促プログラムにかかる2種類の概念(2005年商法の第92条及び政令81/2018/ND-CP:路面店舗に限りません)
- 販促プログラム(形式)には2種類があります。販促の対象が商品である場合にもサービスである場合にも、定価(通常時の価格)を割引にする形式と、無料での提供形式があります。前者を割引形式、後者を無料形式と呼ぶことにします。
-
- 割引形式においては、定価の50%までの割引しか認められません。
- 無料形式においては、定価に対して相対的に考える(見本やサンプル)のではなく、プレゼントや景品(本商品や本サービスに付随しないもの)として理解しますので、このプレゼントや景品の上限額はありません。
- 弊社133号レターでご紹介したように、賞品・景品・特典・贈答品・プレゼント・見本・サンプルなどの合計価値が1億ドン(約50万円)以上である販促プログラム(キャンペーン)は、販促実施前の登録・公示義務がありますが、これは「割引形式」のケースのみとなり、「無料形式」の場合には公示義務のみとなります。公示とは提供場所における情報公開が基本となります(商法の第97条)。
- 例外として、割引形式における「100%割引」が可能なケースがあります。首相や中央省庁、省市レベル行政機関などの決定にかかるケースのほか、旧暦年末の30日間がこれに該当します。
- なお、商品やサービスの性質によっては物価法によって価格制限がある場合などもあります。
==
販促活動にかかる宣伝について(2012年広告法)
- ビラ配り、旗振り、着ぐるみなどが認められています。この中で、旗振りや着ぐるみは人の手によって行われますが、「着る」「掲げる」「貼り付ける」「描写する」その他同様の形式で商品やサービスの媒介(自らが媒体になること)を行うことができます。
- 但し、これらの者が3名以上となるときは、交通安全秩序や社会的安全の確保を必要とされ、実施日の15日前までに省市レベルの文化スポーツ観光局に通知を行う必要があります。
- 看板についてですが、販促用や広告用の看板と店舗や会社の看板では、規定が異なります。こちらは、地域ごとに様々な規定がありますので、また別の機会のテーマにさせていただきます。
==
販促活動にかかるその他の問題
- 路面店舗開店や各種イベントにおいては、近隣対策が重要であることはご存知と思います。周辺道路や歩道の「(非公式)駐車権」を握っているような地元の方がいるケースも少なくありません。
- 基本的に、区域公安(区や郡よりも一段階下部となる「区域」)は、住民からの通報・苦情を受けたら動かねばなりませんので、現場に来ます。したがって、あらかじめ、区域公安には知らせておいた方が無難なケースもあります。現場の肌感でご判断されるといいと思います。
- 法的には、来店客が渋滞を招いた場合、店舗側が公共秩序の規定違反とされるリスクがあります。政令167/2013/ND-CPによれば、罰金10万ドンから30万ドンと安価ですが、地域によっては別の条例がある可能性が高いです。同時に、車の運転手も罰せられる可能性があります(駐停車禁止場所において)。政令100/2019/ND-CPによれば、罰金100万ドンから200万ドンとされています。
- 上記の交通にかかる問題は、整理員を準備する、付近の駐車場を借りてそちらに回すなどの対処が現実的でしょう。
- また、嫌がらせや営業妨害を受けるようなケースは、通常は上記の区域公安への通報となりますが、もし競合他社などによる所業であると考えられる場合、証拠を集めておくことで、後に競争法違反の手段を取ることができるかもしれません。政令75/2019/ND-CPによれば、罰金は1億ドンから1億5,000万とされ、これ以外に損害賠償も課せられるとなると当該競合他社にとっては、それなりに高くつくことになるはずです。
===================
ベトナムにおいて外資の私たちが路面店舗を構えるケースは、飲食店や、飲食店や小売店のフランチャイザーとして自社ブランドのフランチャイジーを管理するケースを除いては、まだまだ少ないと思います。そして、本レターに書いた部分は、地域ごとのローカルルールや近隣の方の「物言い」が存在するケースもあります。
日本での当たり前が通用しないからといって疑心暗鬼になる前に、ローカルに精通したコミュニケーション力の高いベトナム人「渉外」担当を置くことをお勧めします。但し、精通した方であればあるほど、デファクトスタンダードに則り、法律を軽視するケースもありますので、マネジメントサイドにおいては、最低限の知識武装をしていただくようお願いいたします。