ベトナム固有の技術移転法は、なかなか理解が難しいですが、ロイヤリティーの設定や非現金資産による出資(現物出資)における使用等、いろいろな活用法があると考えます。
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移転技術を無形資産とした合弁会社への出資
技術移転とは、知的財産権で守られる工業所有権等を除き、技術の使用許諾のみを行う行為ではありません。ベトナム企業に対して、技術移転を行えば、そのベトナム企業は、当該技術を自由に使用し、ビジネス展開する権利を有することになります。
したがって、ベトナム企業に技術移転は行うけれども、当該技術の使用や展開には、自社も携わりたいというケースが出てきます。その際、移転技術は無形資産として払い込み資本とすることが可能です。
上の図は、日本側が50%、ベトナム側が50%として合弁会社を設立し、日本側は移転技術を無形資産として出資し、ベトナム側は現金で出資することを表しています。
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特殊なケース
上記の事例の定款資本100万ドルを、総投資資本100万ドルに変更します。そのうち、定款資本を60万ドル、借入資本を40万ドルとします。移転技術の価値は50万ドルのままです。
左側は日本側、右側はベトナム側です。
この場合、移転技術50万ドルは、借入資本(貸付)20万ドルを含んでいます。ベトナム側の借入資本(貸付)20万ドルを使用して、日本側へ優先的に弁済をさせることができた場合、日本側は無形資産をもって50%出資を払い込んだばかりでなく、現金で20万ドルを受領することができます。
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この事例は、仮説ではなく、弊社が実際に進めた事例です。
移転技術の無形資産としての出資までは比較的わかりやすい法務ですが、その後の行政手続きのマネジメントはかなり複雑です。そもそも、これらをカウンターパートのベトナム企業に説明して理解を得るのは、非常に難易度が高いです。
しかしながら、今回紹介した事例は、日本の中小企業であってもベトナム企業の需要を満たす技術を有していれば、現金を必要とせずにベトナムで事業開始できることを示し、且つ事業稼働前に現金を確保できるという強みのあるモデルとなります。