ソフトウェアやゲームの製作について、税の優遇制度があることは一般に知られています。法人税10%の15年適用に加えて、4年間の免税及びその後9年間の50%減税です。
これは、現在、IRC(投資登録証明書)上に具体的に記載される必要は特になく、法人設立後においても特別な届け出は必要ありません。すなわち、企業が自身にて適用していきます。
ここで、税務調査において否認されるリスクが発生します。今回は、その否認リスクを避けるための基本的な備えをご紹介します。
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原則1:税優遇の対象になる「ソフトウェア開発」とは何か
情報通信省通達09/2013/TT-BTTTの付属書1に分類されています。
一般的な理解での「ソフトウェア開発」はこの分類に含まれていると思われますが、念のためご確認ください。
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原則2:法人税優遇の適用の原則は何か
財務省通達96/2015/TT-BTCの第10条3項において、ソフトウェア開発業種に該当する条件があります。
- 新規の投資プロジェクトであり、2014年投資法に従ってIRC(投資登録証明書)を有している。
- 投資資本が150億ドン(約7,500万円)未満である。
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原則3:「ソフトウェア開発」の業務原則とは何か
情報通信省通達16/2014/TT-BTTTでは、ソフトウェア開発の活動が詳細に定義されています。
その中より、ソフトウェア開発委託契約書等で表現しなければならないソフトウェア開発プロセスについて規定した第5条を紹介します。以下の7項目が必須とされています(要約です)。
- 要件定義及び発注受注の流れ
- 作業の分析とモジュールなどの設計とモデリング
- プログラミングなどのライティング実施
- 検収及びテスト
- 完パケ化、知的財産権等の登録、マニュアル添付
- インストール、納品、保証、瑕疵担保、保守メンテナンス
- 販売流通
以上について、契約書内にプロセスの有無、詳細、甲乙間の権利義務などが明示されていない場合は、税務調査における否認リスクが高まるでしょう。
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実務を見据えた契約書作成
- ソフトウェア開発においては、日常的に多くの業務指示、追加指示、修正指示などが発生し、状況に応じてタスクを実行し、マイルストーンや期限を守っていかねばなりません。
- 一般的に、まずは基本契約書を作成し、発注作業はメールや特定のアプリケーション、各種の現代的なツールを使い、その後、請書の発行なども特に行っていないケースが多いでしょう。ベトナムの税金関係法令に準拠しようとすると、発注のたびに個別契約書を起こさなければならないような印象もありますが、正に非現実的です。
- ただし、「発注」「受注」「検収」「納品」などのプロセス、業務の「数量」「価格」「期間」などの定量情報が可視化された履歴として残っていないと、税務上の要件が整っていないとされるのが現実です。
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日本とベトナムでのソフトウェア開発委託を想定した場合、通常、ベトナム側は受託側になり、発注者である日本側企業の契約書式を大きく変えることはできないでしょう。
これは、上記の(ベトナム)税務上の要件を揃えることの難しさに繋がります。
しかし、契約における準拠法をベトナム法に変えたり、ベトナム語を備えなければならないというわけではありませんので、上記でご紹介した原則3の部分だけでも、ネゴシエーションした方がよいでしょう。
なお、付加価値税については、弊社034号レターにおいて紹介した財務省通達219/2013/TT-BTCの第4条21項が適用されます。