いつもお読みいただき、ありがとうございます。以前、ソフトウェア開発分野の定義(35号レター参照)や法人税優遇の改正草案(67号レター参照)などを紹介しましたが、7月始めに新たな通達「13/2020/TT-BTTT」が公布され、8月19日より施行されます。
==
前通達16/2014/TT-BTTTとの全体的な比較
- 本通達が法人税優遇の目的である旨が明記されました。
- 適用対象者より個人が除かれました。
- 適用対象のソフトウェア定義について、情報通信省の定め(通達09/2013/TT-BTTT)に則する旨が明記されました。
- ソフトウェア開発のプロセス定義について、前通達の大半が維持され、67号レターで紹介した草案とは異なりました。
- 対象事業がソフトウェア開発のプロセスを有している事業と判定を受けるための基準が明記され、加えて、その際に必要となる書面や資料の種類が明記されました。
- 当局(情報通信省の情報技術室)への報告義務として年1回3月15日までと定められていましたが、これが除かれ、ソフトウェア開発のプロセスや適用税率についての報告義務と変わりました。
==
ソフトウェア開発のプロセス定義
前通達16/2014/TT-BTTTの第5条(要約) | 新通達13/2020/TT-BTTTの第3条(要約) |
1. 要件定義及び発注受注の流れ | 1. 要件定義及び発注受注の流れ
(対象ソフトウェアのアイデアや特性、使用目途、検収時の要件などの文言が加筆されました) |
2. 作業の分析とモジュールなどの設計とモデリング | 2. 作業の分析とモジュールなどの設計とモデリング
(開発時における要件定義への適合性の検証作業、設計やモデリングにおける優先度やソリューションの決定、サーバーサイド・ユーザーサイドのアーキテクト分別など、より細かな文言が加筆されました) |
3. プログラミングなどのライティング実施 | 3. プログラミングなどのライティング実施
(修正・加筆なし) |
4. 検収及びテスト | 4. 検収及びテスト
(ソフトウェアの安全性に関する文言が加筆されました) |
5. 完パケ化、知的財産権等の登録、マニュアル添付 | 5. 完パケ化、知的財産権等の登録、マニュアル添付
(修正・加筆なし) |
6. インストール、納品、保証、瑕疵担保、保守メンテナンス | 6. インストール、納品、保証、瑕疵担保、保守メンテナンス
(納品形態について、パッケージ型と使用許諾権貸与型の文言が加筆されました) |
7. 販売流通(マーケティング含む) | 7. 販売流通
(マーケティング関連文言が除かれ、レンタル文言が加筆されました) |
法人税優遇の対象となるソフトウェア開発とは、上記の7つのプロセスの内、少なくともプロセス1またはプロセス2を含むものではなくてはならないと明記されました。加えて、その際に必要となる書面や資料の種類が明記されました(上記の7つのプロセスの内、プロセス1から6まで)。
===================
今回の通達変更の背景には、ソフトウェア分野やIT分野の発展・細分化に加えて、法人税優遇の(自主)適用において恣意的な解釈が多かったことや税務当局との認識の齟齬が多かったことがあったのでしょう。
ソフトウェア開発の各プロセスにおける文言を加筆し、企業として常備すべき書類や資料を明記したことは、法人税優遇に関する実務のポジティブリスト化と見ることもでき、企業、税務当局の双方にとって合理的な変更であろうと考えます。
しかしながら、ソフトウェア開発のプロセスや適用税率についての報告実施方法が不明瞭であり、今後、オフィシャルレターなどで明確化されることが望まれます。