前回レター第3号では、現地法人社長が知っておくべきであろう管理会計について書かせていただきました。
今回は、更に一歩踏み込んで、本社と現地法人の本質的な「財務関係」について持論を書かせていただき、本社の役員会における増資や親子ローンの否認リスクを少しでも下げられればと考えます。
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ROI(Return on Investment)とは何か
ROIをご存知でしょうか。日本語では、資本利益率や投下資本利益率と訳されます。以下のような公式になります。
ROI(投下資本利益率)=P(利益率:利益/売上) × T(回転率:売上/資本)=利益/資本
投下した資本に対し、どれだけの利益の大きさがあるかを示していますので、親会社は常にこの視点で現地法人の実績を見るでしょう。
現地法人社長は、親会社の社員でありながらもベトナム国では法定代表者として各種の責務を負っていますので、この公式より、利益率か回転率のどちらかを上げれば良いと覚えておくと良いと思います。
つまり、ベトナムで推進している事業が、利益率で稼ぐビジネスモデルなのか、回転率で稼ぐビジネスモデルなのか、見極めておく必要があります。
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ROE(Return on Equity)とは何か
ROEも日本語では「資本利益率」と訳されることがありますが、ROIとの区別のために自己資本利益率と訳すのが良いようです。公式は以下のようになりますが、ROIに比べて少々複雑で、感覚がつかみにくいでしょう。
ROE(自己資本利益率)=当期純利益(税引後利益)/売上 × 売上/資産(総資産) × 資産(総資産)/自己資本=当期純利益(税引後利益)/自己資本
専門家向けではありませんので詳細な論点は省きまして、この指標は、とどのつまり、株主から資金(資本)を調達し、経営者が効率的に利益を出す責任を負うことを示しています。
一般的に、経営者は、預かった資金(資本)を各事業へ投資し、各事業部の責任者は預かった資金(資本)に対して利益を出す責任を負います。この効率を表現するのは、前段のROIです。事業別のROIとでも言いましょうか。
すなわち、皆様の現地法人から見て、親会社は株主に対してROEの効率を高めなければならず、子会社である現地法人は親会社に対してROIを高めなければならないという関係性にあります。
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カンパニー制を取っている会社などをご存知と思います。こちらも、上記のような財務の理論(コーポレートファイナンス)によって、資本の管理をしているということになります。
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ベトナムに駐在する現地法人社長の多くは、会計や税務の専門のトレーニングを受けた方ではありません。
ベトナムに赴任して、いきなり、会計や税務、人事に労務、経営のバックエンドとも呼ぶべき部分を日本基準にて対応することは苦労するでしょう。
弊社レター第1号から本4号まで、会計や税務のスキルセット的な部分ではなく、マインドセット的なことを書かせていただきました。次回からは、他の会計会社などでも多く書かれている基本的なスキルセットについても、弊社なりの細かな視点で触れていきたいと思います。
参照(弊社レター):1号(日本との会計業務の違い)、2号(損益計算書の内訳)、3号(現地法人社長に必要な会計知識)