ベトナムを撤退する場合には、売却ができない限り、基本的に、解散(閉鎖)又は破産の処理を行うことになります。解散(閉鎖)又は破産の概念や根拠法律に日越の大きな違いはありませんが、Covid-19にような非常時(不可抗力事象)においては、例外があります。
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解散(閉鎖)と破産の違い
企業が解散を行う場合には、基本的に全ての債務を弁済する必要があり、紛争状態にある債務があってはなりません。
一方で、破産とは、債務弁済ができない状況である場合の(債務弁済免除)手続きをいいます。残存資産を司法に委ね、各債権者に司法判断にて振り分ける手続きとも言えます。
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手続きの性質
解散においては、企業の意思決定により、債務弁済又は債務弁済計画(又は債務弁済免除や債務弁済免除計画)、契約解除計画、資産清算(や譲渡)計画などをもって、当局に対して解散手続きを開始します。
一方で、破産は、企業や第三者が破産申請を行うことはできますが、決定主体は司法となります。
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企業管理者への制裁措置
解散においては、特に制裁が付されることはありませんが、破産においては企業管理者は、状況に応じて(破産法第130条3項に規定)破産決定時より3年間において企業設立や管理の職に就くことができなくなります。
なお、企業管理者とは、個人オーナーである企業のオーナー、合名会社の社員(出資者)、社員総会議長(会長)及び社員(出資者)、取締役会議長(会長)及び取締役その他社長職や管理職(執行役員レベル)など広範囲を意味することに注意する必要があります。
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Covid-19のような非常時
破産は、通常、債務弁済能力を失ったことの認定を受けるという意味合いがありますので、その旨を証明しなければなりません。したがって、債務弁済能力が少しでも残っていれば、基本的に破産は認められません。
しかし、Covid-19のような非常時(ベトナム語では不可抗力事象といいます)には、制裁措置が適用されないという例外規定があります(破産法第130条4項)。
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撤退とは、一般的には解散をいいます。手続き開始の手順は上記した通りですが、手続き開始後は次の各号にあることは認められませんので注意が必要です。
- 企業の資産の隠匿や分散
- 債務返済請求権の放棄や減額
- 無担保債務について、企業の資産をもって有担保債務へ変更する行為
- 解散を目的とする業務以外の新規契約の締結
- 資産に対する質権や抵当権の設定、資産の贈与や貸与
- 有効な契約書の履行停止
- 資本調達
これらの違反は刑法に抵触するケースもあります。
なお、解散の手続きは、ハノイ市やホーチミン市で現在1年程度はかかります。撤退の申請準備に2か月程度、税務当局内審査に半年~1年程度、現場査察又は税務当局での聴取が数日、追徴税額などの調整・決定に1か月程度、その後、銀行口座閉鎖・印鑑廃棄で終了です。
ただ、事務所も解約し、労働契約も解除しますので、どなたも残っている必要はありません。
撤退というと企業の威信にかかることかもしれませんが、ある上場企業(グループ)では、事業(機会)の拡大として複数の法人や駐在員事務所を出し、その後の選択と集中として閉鎖(撤退)や再設立を数年単位で実行してきています。
撤退までは行かないけれども活動を一時停止したいという場合には、1年間の活動一時停止(休眠)という選択肢もあります。手続きは1か月もかかりません。弊社046号レターも参照ください。