いつもお読みいただきありがとうございます。現在、外国企業がベトナム国外から資本金を払い込むときには、DICA(直接投資口座・資本口座)を経由する必要があります。しかし、一昔前はそのようなケースばかりではなく、経常口座に払い込んだり、現金でベトナムに持ち込んだりするケースもありました。
現在でもDICAを持っていない外資企業はありますが、このような外資企業が国外の企業や個人に利益配当を行う場合、DICAは必要となるのでしょうか。
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DICAを行う取引(=DICAで行わなければならない取引)
DICAには外貨口座とベトナムドン口座がありますが、以下は、外貨口座の機能です。
- 法人やプロジェクトに関する国内外の双方向の資本送金(増減資や清算等を含む)
- 利益配当における国外送金
- 国際ローンにかかる国内外の双方向の送金
- 増資引受による資本準備取引
- 非居住者と居住者での資本譲渡取引
- BCC形式及びPPP形式における非居住者間又は居住者間の資本譲渡取引
- 法令に定められた石油関連の国内取引
- その他、上記にかかる外貨購入や売却
など(中央銀行通達06/2019/TT-NHNNの第6条、第7条)。
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DICAが開設できる企業(=DICAを開設しなければならない者)
弊社029号レターでご紹介した外国直接投資企業で、上記では「外資企業」と書いています。これには、BCC形式に参加する外国企業を含み、PPP形式でプロジェクト会社を設立しないケース(直接参加するケース)を含みます。
また、029号レターで紹介した通り、2019年9月6日より前は、DICA開設企業の条件が一定の範囲に留まり、外国企業や外国人の資本があってもDICAがないケースがありました。
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まとめ
弊社130号レターでご紹介した通り、また上記の通り、利益配当を海外送金する場合(その際の外貨購入も含みます)は、DICA経由で行わなければなりませんので、DICAを開設しなければなりません。
DICAを開設する際、現行のIRC(投資ライセンス)が必要であるか否かですが、投資法や企業法にて問題がない場合には(M&Aで取得したケースなど)、資本金が適切に払い込まれていることを証明できれば不要とされています(中央銀行ヒアリング)。
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ベトナムの為替管理制度は少々複雑です。貿易取引以外の取引は、ベトナムの銀行口座の種類や使途を理解するのが一苦労となります。
資金移動サービスや様々なファクタリングサービスのお問い合わせなども頂いてまいりましたが、外国資本である私たちが関わるとなると、いろいろと制限があり、前例も多くありません。ベトナムは、その人材力から、IT産業やDX産業などが大いに発展していく「土壌」があると思いますが、金融のグローバル化に参加していく力、それを支える法令の整備、そのための専門家支援事業など、多くの課題がありそうです。