いつもお読みいただきありがとうございます。2018年7月10日に施行された政令82/2018/ND-CPによって、EPE(輸出加工企業)が投資ライセンス(IRC)取得時に税関査察を受けねばならず、実務上の障害となっている旨を弊社100号レターで紹介しました。
この問題は、商工会や大使館などもベトナム政府と対話を進めていると聞いていますが、昨今の(ベトナム国)ニュースによれば、ホーチミン市やヴィンフック(Vinh Phuc)省を始めとする人民委員会も、首相に対して、政令82/2018/ND-CP全体に対する意見書を提出しているようです。
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意見書における論点
- 政令82/2018/ND-CPの第30条1項に定められた通り、投資プロジェクトの認可前に税関による査察(意見聴取)を行うことは、投資ライセンス(IRC)の発給にかかる時間を延ばすことに繋がり、プロジェクト主の困難を生じているばかりか、投資ライセンスの発給機関側としても、まだ物理的実体のない工場や倉庫の投資方針の決定や投資許可の段階において税関がこれらを査察し、且つ税関の意見策定の基準自体が不明瞭であることから対応に困難を生じている。
- EPEが、輸出加工区や工業団地の外に商品や原材料の保管倉庫を借りる際、現在の規定が不明確であり外部倉庫を借りることを肯定する明確な規定やガイドラインがない。
- EPEの支店に対し、EPEとしての恩恵を受け、特性を備える十分な許認可を発するための明確な規定やガイドラインがない。
- EPE登記に際して、税関が、企業の申請書類を審査し意見提出することを拒むケースがあり、その場合、プロジェクト主は、投資ライセンス上におけるEPE登記が完了できない。これにより、プロジェクト申請の辞退例も多い。
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ベトナムメディア(複数)の見解
「計画投資省は政令82/2018/ND-CPの見直しを行わねばならないだろう」「当該政令の細則を定める通達公布が求められる」などの見解を示しています。また、以下のような具体的な規定を求めているケースもありました。
- 税関の査察規定
- 工業団地・輸出加工区・ハイテク区域・経済区域の外で倉庫を借りることについての規定
- EPEの支店登記について実体と投資法を踏まえた規定
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ベトナムの製造業は、オフショア需要を中心に発展してきたといって過言ではありません。チャイナプラスワンとして着目され、原材料調達率の低い欠点を乗り越えながら、この10年ほどを発展してきたと言えるでしょう。
その中の主役格のEPEですが、年々、手順(手続き)の厳格化あるいは複雑化の印象を受けます。今回ご紹介したような税関と投資管轄当局の問題ばかりでなく、弊社100号レターでも紹介したとおり、環境関係の手順(手続き)との兼ね合いも、難易度「超難」です。
本年は投資法も改正され、環境法も改正草案が出て環境ライセンスなど新たな取り組みも始まるようです(弊社97号レター参照)。たとえ、わかりにくいフレームワークであっても、きちんとした「解」のある法整備となることを望みます。