いつもお読みいただきありがとうございます。今回は、現行の法律で不明確だとされている規定について紹介いたします。取り上げる規定は、ベトナムメディアが取り上げている規定よりピックアップしました。
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企業法(2014年法の第18条2項e号、2020年法の第17条2項e号)
経営登記機関が求める場合、会社設立を登記する者は、経営登記機関に司法履歴票を提出しなければならない。
- (ベトナムメディアのコメント)会社設立における申請書類や添付書類を定める政令や通達に定めるべきものです。
- (弊社コメント)この規定は、刑法で罰せられている者、執行猶予中である者、破産宣告や汚職防止法違反などの経緯がある者など、特定のケースを指しています。なお、司法履歴票とは、弊社054号レターで紹介した司法履歴証明書を意味しています。
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住宅法関連
2014年住宅法の第6条では「アパートメントを居宅以外の目的において使用する行為」が禁じられています。政令99/2015/ND-CPの第80条では「2014年住宅法の施行前にアパートメントを事業拠点として使用していた場合には、6か月以内にアパートメントではない場所へ当該事業拠点を移動しなければならない」と定められています。
- (ベトナムメディアのコメント)不動産関連の罰則を定める政令139/2017/ND-CPの第66条においては「アパートメントを居宅以外の目的に使用する違反」のみが定められています。
- (弊社コメント)2015年頃よりオフィステルやコンドテルの物件が多く開発され、不動産の実状に法令が追い付いていない状況だと思います。2017年頃までは、アパートメントでの会社本店や支店の登記が可能なケースが多くありましたが、その後厳しくなってきました。なお、「アパートメントを居宅以外の目的に使用する違反」の罰則は3,000万~4,000万ドンとなっています(参照:141号レター)。
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各法令間の外資企業(外国資本のある企業)の語句統一性
2013年土地法の第5条7項では「外資企業とは、外国投資家が100%を出資する企業、合弁企業、外国投資家が投資法令に準じて株式購入や吸収合併又は買収したベトナム企業を含む」と定められています。
2014年投資法の第3条17項又は2020年投資法の第3条22項では「外国資本を有する経済組織とは、メンバー又は株主として外国投資家を有する経済組織をいう」と定められています。
2013年土地法の第183条では、外資企業の土地使用権を定義するにおいて「外国投資家が有する支配的株式又は持分に基づく」としています。
- (ベトナムメディアのコメント)2014年投資法にも2014年企業法にも「支配的株式又は持分」という語句は定義されていません。これでは、外資企業の業務が滞るなど不利益が発生することになります。
- (弊社コメント)「支配」という語句は、投資法には使用されていませんが、企業法には使用されています。外資企業の概念は投資法に明記されており(弊社142号レター参照)、外資企業の目線からすると、大きな問題はないように見受けます。
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一般的に、ベトナム内資の目線と私たち外資の目線は異なります。法律の「狭間」で業務に滞ることは、日々たくさんありますので、上記のような問題点は「軽いほう」ではないかと感じます。
手続きを司る行政機関の担当者は、法律上の語句を企業に良いように幅広く解釈することはしませんし、行政機関内の上司に指摘されないよう慎重に進めることに留意している人が多いでしょう。私たち外資からすると「杓子定規」であったり「屁理屈」であったりするような解釈に遭遇することもあります。このような現状を踏まえれば、語句の統一、誰にでもわかりやすい語句の定義や説明を展開することは重要かもしれません。